「今日も外食?」
出かけようとしている倉持を見かけて声をかけた。倉持とはここ最近はわだかまりも解消しつつあり、長かった冷戦状態も解凍中って感じだ。
「まあ…。」
だけど倉持は珍しく歯切れの悪い返事をした。
「ここのところ多くない?」
「食堂の飯飽きたんだよ」
「日替わりじゃん」
「いいじゃねぇか好きなもん食ったって」
「にしても多くない?東京帰るとすぐ…」
「気に入ってる飯屋があるんだよ」
ほっといてほしそうに言う倉持。なんか怪しい。
「じゃー俺も今日は一緒に行こうかな」
「…は!?なんで」
「いいじゃんたまには。」
「……。」
倉持の超迷惑そうな顔…。なんか面白い。
「…やっぱ今日は行くのやめた」
「はあ?なんだよそれ」
すると倉持は急にそう言って部屋に戻ろうとする。怪しすぎる。なんなんだ。人に知られたくない飯以外の目的があるとか?…あ、まさか…
「なに、彼女でもできたの?」
ギクッ、と音がしそうなほど明らかに倉持が固まった。
「え、マジで?」
「いや!違う…」
「その割には顔赤いけど」
「マジで違うから!」
これ以上の追及を逃れるためか、倉持は急いで部屋に戻ってしまった。
…怪しい。
***
朝起きてトレーニングルームへ行くと、ストレッチをしている倉持がいた。
「よお」
「おはよ」
軽く挨拶をして、俺も軽いストレッチのため体を伸ばす。
「こんな朝早くから、お前にしちゃ真面目だねぇ」
「もともと真面目だっつの」
「そうだっけ?」
倉持はダンベルの準備を始め、俺はそれを横目にマシンプレスに座る。
「なあ、ホントに彼女できたの?」
ゴトン。倉持がダンベルを取りこぼした。
「…っぶねーな!いきなり変なこと言うんじゃねえ!」
「そんな変なこと言った?俺」
「言ったわ!ちげぇって言ってんだろ」
その慌てようが怪しすぎるんだよなぁ…。
「じゃ…好きな人でもできた?」
「……。」
倉持はダンベルを拾い上げながら、チッ、と小さく舌打ちをした。
「うぜー」
「あ…当たり?」
ため息をつき、肯定も否定もしない倉持。大事なとこで嘘つけないよなこいつ。
「じゃあ最近外食してるのってその子と会うため?」
「……。」
「あ、そうなんだ」
多分図星をついてるんだろうが、倉持はだんだんと難しそうな顔になった。何か思い詰めてるような…。
「なんかあったの?」
「いや…。」
倉持は元気をなくしてしばらく黙り、不意に俺を見た。
「お前さ…変なこと聞くけど」
「何?」
「今…どう思ってんの、花城さんのこと」
どきりとした。いきなり光の名前なんて出すから。
毎日のように光のことは考えてる。だけど、もうずっと誰とも光の話はしていない。
「…光?」
久々に口にするその名前はひどく緊張した。
「急に何?」
「なんとなく気になって。」
「…そりゃ…、どうしてるかなって…心配はしてるけど」
「……ふうん」
倉持の相槌が何か意味ありげで、俺は引っかかった。
「え…何、なんかあんの?」
「別に何もねえよ」
「じゃなんで急に…光の話なんかするんだよ」
「なんとなく思っただけだ」
「なんとなくって…」
嘘だ。怪しい。俺の直感がそう言った。
だって、こいつは…
「…お前さ、前に…光のこと奪いに行くとか言ったよな」
「…それが?」
「お前こそ今は光のことどう思ってんの?」
まさかこいつ…光のこと何か知ってるのか?
いや…そんなはずない。俺だけじゃなく…沢村が言うには東条や鷹野だって、光の行方は分からないらしいのに。
「俺は…その言葉を忘れたことはねえよ。」
倉持は真剣な顔でつぶやいた。そして拾い上げたダンベルを棚に戻し、タオルを肩にかける。
「集中できねーから行くわ」
「……。」
倉持がトレーニングルームから出ていき、一人取り残される。
倉持も…あれからずっと、光のことを考えてた…?
俺はにわかに、胸騒ぎがした。