遠征に行った先の街角で、可愛らしい花の置物が目に入る。
鮮やかな黄色の…ガーベラ、と値札には書かれている。

明るくて華やかで可憐で…花城さんぴったり。

「プレゼントですか?」

店先に座っていた店員のおばちゃんが声をかけてきて、俺はぎくりとした。

「えっ、あぁいや、まあ…」
「その黄色のガーベラの花言葉はね、『やさしさ』。それから…『究極の愛』ってのもありますよ。」
「究極の…。」

愛…。
花城さんの顔が浮かぶ。あの笑顔が見られるなら、俺は…。

「こ…これください。」
「はいまいどあり。」
「あっ…、あとこれも!」

ついでに近くの棚にあった土産菓子も買って、俺は店を離れた。
花城さんのあの部屋、すげぇ殺風景だったし…。これを見ていつも、俺を思い出してくれたら…なーんて。


***


今日どっかご飯行きませんか……っと。

花城さんにLINEを送り、ソワソワと返事を待ちながらロビーの自販機で買ったファンタを飲む。
今日は遠征から帰ってきて一日オフということで、寮の奴らはだいたい出払っていて静かだ。
そんな時ロビーに御幸がやってきた。珍しくスマホをいじりながら、ソワソワした様子で…。

「あ…」

俺の視線に気が付いたように顔を上げて、なんかちょっとギクリとしたような顔をして、御幸は苦笑した。

「何してんの?」
「あ?別になんだっていいだろ」

あ、そう…と御幸は受け流し、自販機でコーヒーを買う。その時手元のスマホの画面は…LINE。誰かからの返事を待ってるようだ。

「お前今日、どっか出かけんの?」

御幸がコーヒーを飲みながら聞いてきて、俺はとっさにスマホを伏せた。

「別にまだ…決めてねぇけど」
「ふーん…」
「…お前はどうなんだよ」
「俺は…」

言いかけた御幸の手の中で、スマホが鳴った。弾かれたようにスマホの画面を見た御幸の顔が、ほんの少し緩む。

「…夜は出かける」
「あっそ…、」

え…。まさか。まさかな。

なんだか急に嬉しそうにいそいそとスマホに文字を打ち込み始めて、そそくさとロビーを出ていこうとする御幸の背中に一抹の不安を覚えた。

「あ、じゃあな」

御幸は最後に思い出したように俺を振り返って、腹が立つほど浮かれた笑顔でそう言って、部屋に戻っていった。
俺は伏せていたスマホの画面を見た。するとちょうどそのタイミングで、俺が送ったLINEに既読マークがついて…

…シュポ、という情けない音とともに送られてきた返信には…

「今日は予定があるのでごめんなさい。」

…今の…
御幸に先越されたか…!?


***


夕方5時ごろになって、御幸はこざっぱりとキメたカッコで出かけて行った。あんなの、絶対デートだろ…。
俺はそれをウエイトルームのガラス張りの窓から恨めしく見送った。

あの二人…。
すぐに、よりを戻すなんてこと…。

…いや!でも、俺だってここのところは…花城さんといい雰囲気だった。勘違いなんかじゃない。そう、御幸が現れるまでは…。

一度は付き合っていた二人。
嫌い合って別れたわけじゃなさそうだし…何かのはずみでそーなっちゃうってことも…。

うわー、嫌だ、考えたくねぇ…!!

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