帰りの車内はひどく静かだった。
迂闊に言葉をかけるわけにもいかず、俺はただ車を走らせた。
マンションの前に車を停めて、しばらくハザードの点滅音が響いた。
「…着いたけど…大丈夫?」
光はもう泣き止んでいたけど、表情は暗かった。
「…うん。ありがとう送ってくれて」
光はまともに俺のほうを見もせずに言って、シートベルトを外した。俺はついその手を掴んだ。光は反射的に顔を上げ、やっと俺を見た。
「…なんか一人にするの心配なんだけど」
「……。」
「本当に大丈夫?」
俺を見つめた光の瞳がだんだんと潤んで、ぽたっと雫がこぼれた。
***
「お邪魔します…」
光の部屋に入れてもらうのは少し緊張した。だけど部屋の中に入って、俺はすぐにそんなよこしまな気持ちは消えた。
何もない…最低限の家具だけが置かれた殺風景な部屋。ローテーブルの上に置かれた黄色い花の小さな置物だけが目立っている。
その何もない部屋に入っていった光は、力が抜けたようにベッドのふちに腰かけた。
ほかに座る場所もなく、俺も近くに行って、隣に腰掛ける。ベッドがきしんでマットレスが沈み、静かな部屋に沈黙が下りた。
「…ずっと考えてたんだけどさ」
「……。」
「俺は一度しか光のご両親に会ったことないけど…それでも、本当に…」
「……。」
「…光のこと、大事なんだなって思ったよ」
こんな…陳腐なことしか言えない。もちろん本心だけど、こんな言葉じゃきっと、光の心には届かない。いや…そもそも、もう言葉なんかじゃ解決しないのもわかってる。俺にできることなんてないことも…。
「光も…ご両親のこと大事だっただろ?」
「……。」
「親が早く帰ってくる日はさ…嬉しそうに教えてくれたじゃん」
「……。」
「だから…、さっきのことが本当でも、関係ない…本当の娘みたいに思ってたんじゃないかな…ご両親は」
「……。」
ぽたぽたと涙がこぼれるままにして、光はうつむいた。その背中に手をまわして肩を抱き寄せると、光は身を預けてきた。
ひどく懐かしい光の体温。こんなに近くに…密着するのは久しぶりで、動揺と喜びに胸の底が震える。光が俺の前で涙を流しているのも…こんな姿を見せてくれるのも、同情しつつも嬉しくて…やっぱり俺はエゴイストだ…。
「それに…何があっても光は光だから。」
「……。」
光は静かに頭を俺の胸にもたれてきた。そしてそっと遠慮がちに、俺の背中に手をまわして触れてきた。すがるようなその仕草に胸が苦しくなって、俺は光を抱きしめた。
細い、華奢な体。こんなか弱い身でずっと光は一人で抱え込んできたんだ…。
光は遠慮がちに俺の体に手をまわした。そしてつい気が緩んだように、昔のように…俺の胸に頬ずりをした。
覚えてる。こうするとき光は、眠いんだ。
「…眠くなった?」
背中を軽く叩きながら聞くと、光は身じろぎをしてうつむいた。
「昨日…あんまり眠れなくて…」
「いいよ、寝て。」
「…大丈夫」
我に返ったように少し俺の体を押し返す光。だけどそのまま体をくるむように抱きしめて、俺は光もろともベッドに倒れこんだ。
「はいおやすみ〜」
「……。」
光はちょっと不貞腐れたように口をとがらせ、それでも…だんだんとうとうとして目を伏せ、俺の胸元で目をつむった。
しばらくして静かな寝息が聞こえ始める。俺は昔のことを思いだしていとおしさに頬が緩むのを感じながら、光を大事に…大事に抱きしめた。
***
夕方になって、腕の中の光が身じろぎした反動で、俺も目が覚めた。
「…おはよ。」
「……。」
目が合った光にそう言うと、光はまだ少し赤い目で俺を見つめた。
そして身じろぎをした光が離れようとしているのかと思って腕を緩めると、光は縮めていた手を伸ばして俺の背中に手を回してきた。
いとおしさを感じて俺ももう一度光の体を抱きしめなおす。そして何かを求めるように見つめてくる光を見つめ返して、俺は…その期待を確かめるために少しずつ顔を近づけた。
光は俺を見つめて、ほんの少し、顔を上げた。
受け入れるように。
そして俺たちは、唇を重ねた。
ゆっくりと、今までの時間を取り戻すように、そしてお互いの気持ちを確かめ合うように…。
スローモーションのようにゆっくりと、弄り合うようにじっくりと、長いキスをした。
柔らかくてあたたかくて…甘い。俺は少し泣きそうになった。
やっと光とまたこうしていることが、夢のようで。
堪らなくなって、俺は光に覆いかぶさる。光は受け入れるように俺に抱き着いた。
何度もキスをしながら服を脱ぎ捨て、光の服のボタンをはずした。下着があらわになって、真っ白な肌が現れて、俺はそこにも何度もキスをした。
体の下に手を差し入れると光は体を持ち上げて、俺がブラジャーのホックを外すのを手伝った。
そしてすぐに一糸まとわぬ姿になった俺たちは、溶け合うように体をくっつけながら、何度も何度もキスをしながら、お互いの体を弄りあった。
細い腰…そして胸のふくらみへと手を滑らせると、光は腰をよがらせて甘い吐息を吐く。
滑らかな肌は吸い付くようにしっとりと汗ばみ、俺の手のひらを密着させる。
胸の蕾を摘むと、光は甘い声をこぼした。
「んっ…。」
そのかすかな声で胸の中に火が付いたような熱さが噴き出し、俺は蕾に舌を這わせ、口に含んで吸い上げた。
「んん…、や…。」
光が身を捩るたびに胸が顔に押し付けられ、その柔らかさに溺れそうになって、また理性が崩落していくのを頭の隅で感じる。
欲望のままに伸ばした手は光の秘部を撫で、予想以上の蜜が指に絡みついた。
「あ…。」
花弁の間を掻き分けるように撫でて、そこの小さな蕾をこする。
「あっ、だめ…、」
だめ…ってのは、イイ…ってこと。俺はそこを擦り続けた。
「あぁ、いやっ…、だめぇ…っ」
ぎゅっと足が閉じて俺の腕を挟む。花弁がきゅうっと締まるのを指先に感じながら、俺はその狭い入口に指先をねじ込ませた。
「あ、あっ…」
指一本でも…狭い。前にした時よりも…。
光…、ずっと誰とも…。
また胸の奥で炎が大きくなる。光の俺を見つめる目が…、俺の欲望を掻き立てる。
じっくりとほぐした花弁の中に、指を増やして2本入れ、また少しずつ押し広げた。光の甘い声を聴きながら、頭は酔いしれているみたいにくらくらして…
「足…開いて」
ぎゅっと縮こまる太ももに阻まれて固まる腕を動かして言うと、光は恥ずかしそうにゆっくりと足の力を抜く。
そして解放された腕を、俺は小刻みに動かした。
「あっ、あぁっ…」
光はよがりながら、もどかしげに手を伸ばしてきて、俺の肉棒に触れた。もうはち切れそうなくらいに硬く膨れ上がったそれを、指先でなでて柔らかく握り、その熱に驚いたように手を離す。
もう入れたい…。
俺はベッドの下に落ちたバッグを拾い上げ、財布の中からゴムを取り出した。
持っててよかった…!!
昔ゴムがなくて光とできなかったことがあってから、ずっと入れっぱなしだっただけだけど…。
俺は手早く開封し、ゴムを肉棒に装着した。久々の感覚…。そして…
光の足の間に入り込み、肉棒を花弁に突き立てる。
「…一也先輩…。」
俺を見つめて、手を伸ばす光がいとおしくてたまらない。
俺は光を抱きしめて、肉棒を花弁にゆっくりと挿入した。
「ああ…っ、」
奥へと進むにつれて、ぎゅうっと締め付けてくる中…。光の快楽がそのまま伝わってきて嬉しくなる。
「一也先輩…、かずやせんぱい…っ」
「光…っ」
俺の名前を何度も呼ぶ光…。可愛くて、いとおしくて、嬉しくて、頭がおかしくなりそう。
ゆっくりと肉棒を光の中に擦り付け、混ざり合う汗と愛液がたてる艶めかしい音にぼうっと気が遠くなった。
まるで夢の中にいるみたいで…
俺の首に腕を回してしがみつく光の華奢な腕も、汗ばむ体をくっつけて感じる体温とその肌の柔らかさも、下半身を支配する、気を失いそうになるほどの快楽も…。
「はあっ…、あっ…。」
耳元で響く、光の吐息と喘ぎ声も…。
俺はただひたすらに、その幸福感に身を任せた。