もう…連絡もくれなくていいから…。


光の言葉が脳裏に焼き付いている。
あんなこと言われたら…軽い気持ちで連絡できない。

せっかくまた繋ぎ止めた繋がりが断たれてしまった。どうしたら…いいんだろう。


部屋でぼんやり腑抜けていると、LINEが届いてスマホが短い音を立てた。
しばらく放置したがやがてゆっくりとスマホを手に取ると、それは間宮からのLINE。

『テレビ見ろ。6チャン』

……なんなんだ。自分が出るとか?知り合いが出てるとか?
まあ暇だし、と俺はテレビのリモコンを取って電源ボタンを押した。言われた通りの番組に合わせると、それは「冬の音楽祭」という音楽番組。ちょうどオープニングが終わったところのようで、スタジオのゲストが映し出された瞬間だった。

俺は息をのんだ。

「はい!それでは本日のゲストは、今年デビューを果たし今大注目のシンガーソングライター間宮傑さんと…同じく今年デビューされて大人気の女優花城光さんにお越しいただきました。」

間宮と……光!?音楽番組で共演って…そんなのきいてない…。
間宮は濃紺のタキシード姿で、光は明るいイエローのドレス姿。まるで美女と野獣…。

「よろしくお願いします。」
「お二人ともこの番組は初めてですよね。」
「はい。緊張してます」

間宮が真顔で答えるのを、隣の光が柔らかなほほえみで見つめた。

「花城さんはテレビで歌を披露するのも初めてだとか?」
「はい。そうなんです…」
「自分がこのお話をいただいたとき…相手役の人がまだ決まってないって聞いて。わがまま言ってオファーさせてもらいました」
「えぇ、そうなんですか?間宮さんが?」
「はい。」
「何が理由だったんでしょうか?」
「まぁ花城さんの…オーディション映像を見て、歌がすごくよかったのと、実は花城さん同じ高校出身で1個下なんすよ。」
「え!そうなんですか」
「えぇまあ、なんで、まあ…ぶっちゃけると、花城さんと会いたかったんで。」
「え…!?」

司会が固まった。光も固まって、その頬が赤く染まっていく。

「…と、おっしゃってますが花城さん…!?」
「…びっくりです…ありがとうございます。」

光は戸惑いつつもそう取り繕い、苦笑いを浮かべて間宮に他人行儀なお辞儀をした。

「高校生の頃のお二人はどんな感じで…交流とかはあったんですか?」
「いえ…」
「自分が片思いしてました。」

そして司会の質問に、首を振って否定しかけた光の言葉を遮って、間宮がはっきりと言い放つ。

「…そうなんですか!?」
「はい。何度もアタックして玉砕してました。」
「……。」
「それはすごいですね…!」
「花城さん死ぬほどモテてたんスよ。本当に」
「いやそんなことは…」
「いやぁそうでしょうね〜!おきれいですし…!」
「めちゃくちゃ可愛かったですね。あ、今もですけど」
「……。」
「素敵ですね〜!」

光が困り果てている。だから嫌われんだよ、間宮の奴…。アホか。

「ということですが花城さんは間宮さんのことどう思われてます?」
「えっ?…うーん、あの…面白い方…ですね」
「うふふ、高校生の時もこんな感じで?」
「そう…ですね…、…ふふふ」

光が笑ってごまかすと、司会はようやく話を切り上げた。

「うふふふ、え〜面白いお話でした。それでは歌の準備をお願いします。」

光と間宮が席を立ち、画面の外に出て行った。

「はい。それでは間宮傑さんと花城光さんで…『Beauty and the Beast』です。どうぞ。」



***


冬の音楽祭実況スレ…その24

025:間宮傑って誰?
026:天然水のCMの歌の人
027:公開告白キターーーーー
029:花城光迷惑そうでワロタ
030:花城光には倉持がいるから
032:花城光と間宮傑と倉持洋一と御幸一也がいるってどんな学校
035:そのうち3人が3角関係www
038:これもう御幸も花城光のこと好きだろ
039:御幸は花城光の元カレだろ?
041:倉持と間宮って面識あんのかな
046:間宮ずっと花城光見つめてんじゃねーかwwwちったぁカメラ見て歌えよwww
048:花城光歌うまいな
052:間宮ガチでずっと花城光しか見てなくて草生える
053:花城光が美しすぎる
054:歌ってる顔ドアップでも可愛さの暴力
056:こりゃ好きになるわ、しゃーない


「思ったより炎上しちまったわ」
「何やってんの?お前…」

後日間宮に飲みに誘われて行くと、音楽番組の話になった。

「見た?ネット」
「まあ」
「俺殺害予告とかされてんだけど」
「どんまい」
「やっぱすげー人気だな、花城さん」

間宮はしみじみと言って熱燗を口に含む。渋い奴。

「まあでもおかげで花城さんにアピールできたし!」
「迷惑そうだったけど」
「何言ってんだバカ!女は強引に迫られるくらいのほうが嬉しいんだよ!」
「引いてるようにしか見えなかったけど」
「うるせぇな〜!お前は何もわかってない!…そういやお前、高校んときもハッキリしなかったよなァ〜」
「…は?」

顔を引きつらせながら、内心ぎくりとした。そういや光…付き合い始めたことをみんなには最初隠してたこと、気にしてたみたいだった。

「その点倉持は漢だよな〜、あーいうとこは評価するわ、まあ俺のほうが良い男の自信あるけど」
「…はい?」
「インタビューでも堂々としてんじゃん!花城さんラブアピール。あれピエロと見せかけて周りの男へのけん制もあると思うぜぇ〜?」
「……。」
「その隣でお前はいつもうじうじ…カンケーないみたいな顔してよぉ、仮にも元カレだとはとても思えねーわ」
「…うじうじなんてしてねぇし」
「いいのかぁ〜?お前より戻したいんじゃねーの?それとももういいの?」

もういい…っていうか、もう、フラれてんだよなぁ…。

「なんだ急にしょぼくれた顔になりやがって」
「別に…」

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