いつの間にか年を越して、町はすっかり正月ムード…。
三が日は実家に帰省したものの、特にやることもなくて暇で、すぐに都内の寮に戻ってきた。

そして…。


何の知らせも来ないスマホの画面を寂しく眺める。光からまた連絡する、と言われてから、一向に何の音さたもない…。
あの、御幸の記事が出てから、その真相も聞けていない…。あの後御幸も実家に帰っちまったし、光にわざわざ連絡して聞くのもなんだか躊躇われて。

やっぱヨリ…戻したんかな?それならそうと早く言ってくれ…。…い、いや、やっぱ聞きたくない…。

けど…このまま何も行動しないのは間違ってるよな…。

「あけましておめでとう」
「飯でも行かない?」

これだけの文を、打っては消し、打っては消して…やっとの思いで送信ボタンを押した。
会いたい…とかだと重く思われそうだし…
LINEで御幸のことを聞くのもなんか、ダセェし…

…ウザい男って思われたくない…!

あ〜…あんなキス…したのに…!
なんでまた片思いの駆け出しみたいになってんだ。

はあ…。
それに光…いつもLINEの返事遅いんだよな。仕事で忙しいだけかもしんねーけど…脈ないのかと思うと、凹む…。



***



「おー御幸おかえり〜いつ戻ったん?」
「ついさっきですよ」

昼前、その声に反応して振り向いた。帰省から戻ってきたらしい御幸がラフな格好で食堂に現れたのだった。

「ちょうどよかった、今夜コレ行く?」
「…遠慮しときます」

先輩からの飲みの誘いを断りつつセルフの麦茶を飲みに来た御幸に俺は近づいた。

「よお」

俺が声をかけると、振り向いた御幸は目つきを鋭くした。

「ちょっとツラ貸せよ」

そう言って御幸の顔に了承の色がにじんだのを見て、俺は踵を返す。
二人で食堂を出て人のいないロビーの長椅子に座る。暖房の行き届いていないこの通路同然のスペースは底冷えするほど寒いけど、今はそんなことどうでもよかった。

「で…何?」

御幸はさっき麦茶を飲み損ねたからか、自販機でホットコーヒーを買ってそれを飲んでいる。

「何じゃねぇ。わかってんだろ」
「光のこと?」

悪びれもせずにその名前を出す御幸に苛立ちが沸いたが、それよりも…悔しさに胸の中が支配された。

「…コソコソ会ってたみてぇだな」
「何だよそれ。会うのにお前の許可がいんの?」

怒りに目が血走ったが、御幸の言うことも正論で何も言い返せなかった。

「…ヨリ…戻したのかよ」

確かめたくないけど…確かめなければならないこと。
もう次の瞬間には御幸の声がして、それは「うん」と響く嫌な予感しかしなかった。

「戻してない」

だから、そう聞こえた御幸の言葉がすぐには理解できなかった。

「…は?」

静まり返ったロビーに俺の間抜けな声が響いた。

「だから、戻してないって」
「え?なんで、だって…」

部屋に通ってて…何もないなんてことあるか!?

「じゃあ……」
「……。」
「…ど、どこまでした?」

混乱する頭のまま正直にその疑問をぶつけると、御幸はブッと少しコーヒーを噴いた。

「は?そんなこと聞く?普通」
「じゅ…重要だろそれは!」
「……。」

御幸は呆れたように笑みを浮かべ、缶コーヒーをテーブルに置いた。

「飯食わせに行ってただけだよ。」
「え…」
「だって心配じゃん?あんな様子見たらさ…」

そう呟く御幸の態度に、嘘はなさそうだったけど…
…男としては、にわかには信じられねぇ。

「別に信じなくてもいいけど。」
「…チッ」

飄々と言う御幸にいら立ちのまま舌打ちをこぼした。相変わらずいちいちムカつくヤローだ…。
その時俺のスマホが鳴って、反射的に画面を確認する。

そこには花城光という名前。そして…

「あけましておめでとう」
「今度の金曜日は?」

…という、返信。
それを見た瞬間に胸が熱くなってしまうのだから、もうどうしようもない。

「じゃ…、もういい?」

御幸がおもむろに立ち上がって、缶コーヒーを拾い上げ立ち去ろうとした。

「あ…おう」

そして俺の返答を聞いて、御幸は少し気だるそうに歩いていく。
…ホントに何もなかった…んだよな?

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