「試合、見にきてくれてたんだってなー。」

花城と過ごす休み時間も日常になっていた。特別で最高の日常だ。
親しげな笑顔を向けてくれる花城に、いつだって心が浮き足立つ。

「うん。司から?」
「うん、聞いた。花城、成宮さんに気に入られちゃったんだって?」
「……。」

花城の笑顔が一瞬で苦笑いに変わった。

「余計なことまで…。」
「あはは。それで、何があったんだよー。」
「もう司に全部聞いたんでしょ?」
「花城から聞きたいんだよ。」

当事者だからさ、と笑うと、花城は少し俺を睨んで窓辺に頬杖をついた。

「御幸先輩と会って、話してたら…あの人が来て、名前教えてって言われたんだよ」
「それで?」
「それだけ。」
「君のために勝つから!って言われたんじゃなかった?」
「もー、全部知ってるんじゃん!」

花城が俺をこづいて俺が笑い、廊下に二人の笑い声が響く、通りすがりの男子生徒が俺を品定めでもするように、羨ましそうな目で見ていく。
二人だけの世界。何て、自惚れかもしれないけど…。


***


「なあ、東条って、花城さんと付き合ってんの?」

昼休み、クラスの男子で昼食を食べている時、クラスメイトの橋本に聞かれた質問に俺は一瞬頭の中が真っ白になった。

「…な、ないない。」

顔が熱くなるのを感じながら、その熱を振り払うように首を振る。
確かに花城とはよく話すし、鷹野と違って花城はあまり気さくなタイプじゃないから、クラスの中では俺が一番花城と仲のいい男子、というふうに見られる自覚はあったし、少し得意になっていた自覚もある。だけどこう面と向かっていざ聞かれると、思っていたよりも俺は動揺した。

「でも、よく休み時間二人で話してるじゃん」
「たまたまだよ…席が近いから」

嘘だ。本当は入学して花城を見てから…めちゃくちゃ勇気を出して毎朝挨拶をするようにしていた。機会があれば話しかけたり、授業のことを聞くふりをして声をかけたり。その努力が少しずつ実って、今自然に話せるようになっただけだ。

「あー、いいなぁー花城さんの隣の席…」
「東条、めちゃくちゃラッキーだよな」
「あはは…」

俺は他人事のような笑い方でその羨望を乗り切った。
花城のことをどう思っているかなんて、誰にも知られちゃいけない。花城に気づかれたら、この居場所は無くなってしまう。
花城の友達という居場所が。

俺が花城のことを、

好きだとバレてしまったら。


023

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