「あ!花城!」

花火大会が始まって少しして、東条と金丸がやってきた。東条は花城の姿を見つけて早速話しかける。隣に座っていた哲さんは、今は立ち上がって花火を見ていたから、一緒にいるとは思わなかったらしい。

「花火見にきたの?」
「うん」

東条の質問に頷きながら、花城は哲さんを一瞥したが、東条は気づいていない。

「あそうだ、あの飴すげー美味かったよ!ありがとな。」
「あ、御幸先輩から受け取った?」
「そうそう!」

東条が言って、花城は俺を振り向いて笑顔になった。花城からもらった飴を、本当は独り占めしたかったけれど、後で花城にバレても面倒だから東条と金丸には分けてやったのだ。

「あ、俺も…貰いました。ありがとう」
「ううん。」

金丸も恥ずかしそうにお礼を言う。

「ああ、あの飴か。確かに美味かったぞ。」

と、横で聞いていた哲さんが話に入った。東条たちは哲さんも自分たちと同じように飴をもらったのだと思ったらしく、全く気に留めていなかったが、俺は違った。
哲さんは花城から直接飴をもらったんだ。それもきっと、1袋丸々だ。哲さんは特別で、俺はその他大勢。それをつきつけられた気がした。自分でもくだらないとは思うけど。

「俺はもらってねーぞ」
「……。」

隣の倉持に殺されそうな目で睨まれたが、無視。

「花城、あっちに1年集まってて…今沢村たちがジュースとか持ってきてるから、一緒に見ない?」

東条が土手の階段に集まる1年グループのほうを指して言った。花城は哲さんを見上げ、口を開こうとした。

「あ、えっと、でも私…」
「悪いが、花城は俺が誘ったんだ。」

それを遮って、哲さんが恥ずかしげもなく言った。堂々とした微笑みを浮かべたまま。
えっ、と息をのんだ東条と金丸は視線を交わし、緊張した笑みを浮かべた。

「そ、そうなんですか」
「スイマセン…」

おい、いこうぜ、と金丸が東条をつついた。

「あっ…じゃあ、俺たちは向こうに行きますね」
「失礼しました…」

東条たちが土手の階段のほうへ去っていくと、哲さんはまた花城の隣に腰を下ろした。
その横顔を見て、うつむいて、照れたように髪を触る花城の横顔を見ると胸が苦しくて、俺は踵を返した。

「御幸?」
「俺はあっちで見るわ」
「え…って、オイ待てよ」

倉持が不思議そうについてくる。

「どうかしたのか?」
「いや…、哲さんたちの邪魔しちゃ悪いだろ」
「そ…そうかもしれねえけど」
「……。」
「え…やっぱそういう感じなの!?哲さんと花城さんって…」

倉持の顔は驚きの他にショックも混ざっているように見えた。まあ…花城のことが気になったことのない男なんていねえよな。あんなに可愛くて…面白くて。目が離せない…

「さあな。詳しくは知らねえけど…哲さんが好意あるのはハッキリしてんだろ」
「……。」

花火の勢いが増していく。その音と光で、周りの部員たちは俺と倉持の会話を気にもしていない。

「やっぱモテんな〜花城さん…」

倉持は呟いて、花火を見上げた。

「哲さんかあ…強敵だわ。なんかショック…」

「…ショックどころじゃねぇよ…」

呟いた声は、花火の音にかき消された。
敵わねえよ…あんなすごい人。花城はもう、鉄さんのことが好きだし…奪える気がしない。

「…なんか言った?」

こっちに顔を向けた倉持に、なんでもない、と首を横に振って、俺は花火の眩い光が滲むのを見つめた。

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