「あ…いた〜!光〜、」
図書室に行ったきりなかなか戻ってこない光を探して渡り廊下まで来ると、そこの自販機のそばでベンチに座る光の後ろ姿を見つけた。
「どうしたの?こんなところで」
寒くない?…と、言いかけて光の顔を覗き込んだ時。
俯いている光の目が、今にもこぼれ落ちそうなほどしずくをうるませているのが見えて、私は息を呑んだ。
「え…どうしたの!?」
あわてて光の手を握り隣に座ると、光はもう片方の手で涙を拭った。拭いきれなかった涙が、ぽたっとスカートに小さなシミを作った。
「ねえ…何かあったの?」
「……。ううん…」
「じゃあ何で泣いてるのよ〜」
「……ふふ…」
光はなぜか小さく笑った。だけどその笑いは自嘲気味で、悲しげだった。
「冗談だって…」
ぽつりと、光がつぶやく。その口元には笑みが浮かんでいたけど、目にはまた涙が滲んだ。
「え?冗談って…なにが?」
「好きな人…」
「え…?」
「私って言ったの、冗談なんだって」
それって…御幸先輩の。
「ふふふ」
光は笑いだし、涙を拭って空を見上げた。
「バカみたい」
「光…」
「でも、よかった…勘違いする前で」
そう呟いた光の目が、また潤んで空の色を写したから、私は光を抱きしめた。
***
光に振られたと思って…冗談ってことにしたのかなー?
そうとしか思えない。
なんというすれ違い…。
「鷹野?どうしたんだよぼーっとして」
珍しいな、と、東条くんが声をかけてきた。
「あ、ううん!ちょっと眠くてさ〜」
「ああ、昼食うと眠いよなあ。」
「そうそう〜」
東条くんは自分の席の鞄から財布を取ると、じゃあ、とまた教室を出て行った。財布を取りに来ただけらしい。それなのにわざわざぼーっとしてる私に気付いて声をかけてくれるなんて、優しいなあ。
私は席について本を読んでいる光を眺める。さっきから全然ページが進んでない。御幸先輩のこと考えてるのかな…。
私にできること…あるかなあ…。