「今朝うちの学校の野球部ニュースでやってたねー!」
「見た見た!主将インタビュー」
「うちの野球部の主将の人、イケメンだよね〜」
「あー御幸先輩でしょ?私他校の友達から紹介してほしいって言われたもん!話したことないから無理って言ったけど〜」
「あ、私も私も〜他校通ってるイトコにさぁ…」
「御幸先輩大人気だねぇ〜。イケメンだもんねぇ〜」
クラスの子たちの噂話が聞こえてきたのでそう呟くと、光がわかりやすく拗ねたような顔になった。
「さっさと告っちゃえばいいのに」
「…え!?何言ってんの。」
「いやいやぜぇ〜ったい御幸先輩は光のこと好きだって!!」
「もーやめてよ。」
フン、と頬杖をつく光。そこへ東条君が通りかかった。
「あ、東条君〜。御幸先輩ってモテる?」
「え?」
東条君は自分の席へ向かっていた足を止めて、私たちのほうへ体を向けた。
「あー…まあ、そうだな…よく女子が練習見に来てキャーキャー言ってるし」
「やっぱり〜。ホラ、光〜。」
「…何?どうでもいいし」
強がっちゃって…。まあそんなところも可愛いんだけど…。
「御幸先輩がどうかしたの?」
そう尋ねる東条君は、明らかに光の反応を窺っている。…こっちの恋模様も気になるけど〜。
「いや〜。イケメンだよねって話してたのー」
「司がね。私は言ってない」
「えー!でもイケメンなのには異論はないでしょ!?」
「別に普通じゃない?」
「ゼータクー!!あ…でもそっか、あんな美形なイトコがいるもんなぁ〜」
「…光臣のこと?美形?」
光は眉根を寄せて首を傾げた。
「ウッソ!そりゃないでしょ!私光臣君見たときハリウッド俳優かと思ったもん!」
「はは…それ牧田も言ってた」
「だよね!?タイタニックのレオ様並みの美しさだったもん!」
盛り上がる私たちを冷ややかな目で見ている光。本人もこの美貌だから…美人のハードルがとんでもなく高いのか!?
「…じゃあ光は誰ならイケメンだと思うの!?」
「えぇ?」
「じゃあ好きな顔でもいいよ!芸能人とかでも!誰かひとり挙げて!」
「えー…」
光は窓の外に視線を移して、考えるように少し遠い目をした。
「…じゃ、変な勘違いしないでね?」
「え?」
「顔とか雰囲気がいいなってだけで、その人が好きってわけじゃないからね?」
「う、うん…」
「……。」
固唾を飲む私と東条君。光はその緊張感に少し顔を赤くして、ぎこちなく小さな声でつぶやいた。
「…倉持先輩」
「…ええええぇぇぇぇ!!!???」
東条君も叫んだが、私の叫び声がすべての音をかき消してしまった。それくらい驚いた。だって、だって…
「…美女と野獣か!!!」
「え?な、なに…」
「マジで言ってる!?倉持先輩!?…って、あの倉持先輩!?」
「…何かおかしい?」
「おかしいよ!!!」
御幸先輩をイケメンという人はキリがないくらいいるだろうけど、倉持先輩をイケメンという人は学校中探しても一人いるかどうかじゃなかろうか…その一人がこの、学校一の美少女ってことにも驚きだけど!!
「なんで?…かっこいいじゃん」
拗ねたような照れたような顔でつぶやく光が可愛すぎて、余計に頭が追い付かない。
「ど、どこがかっこいいと思うの?」
「え?だから…顔」
「マジで言ってる!!?」
「もー…何?もう一度言うけど、別に好きとかじゃないからね?」
「わ、わかってるけど…あの人がイケメン!?御幸先輩より!?」
光は赤い顔になって、またつぶやいた。
「…私はそう思うけど…。」
…まじで!?
「うわ〜!!倉持先輩これ聞いたら失神しちゃうわ」
「なんで?」
「ははは…」
苦笑する東条君がちょっとガックリ感を隠しきれていないのも気になるけど。
それよりも今は、光の好みのタイプが衝撃過ぎて…。
まだにわかには信じられない。こんな美女が、あの倉持先輩を…!?
この世は不思議だ…。
***
「…なんだよ」
廊下で出くわした御幸先輩と倉持先輩を見て、私はついついニヤついて二人を見比べてしまった。
「いや〜あのですね、倉持先輩。光が〜…」
「ちょっと司!!」
やめてよ!と私の腕を引っ張って阻止する光の慌てようを見て、先輩たちは顔を見合わせる。
「きゃははは。なんでもないで〜す」
「ハァ…?」
眉根を寄せながらもなんとなく感づいたような、まんざらでもないような顔をする倉持先輩。それに対して嫌な予感がしたように顔を強張らせる御幸先輩。
「…やめてよね!?」
「わかってるってば〜。」
念を押す光にうなずいたけど…ここらでちょっとくらい刺激してあげないと、って私は思うんだよなぁ〜。
「…と見せかけて!倉持先輩、光がカッコいいって言ってましたぁ〜!」
「な…」
「…え!!?」
口を開けて固まる光と倉持先輩は、見る見るうちに顔を赤くした。御幸先輩はというと…あきらかにショックを受けたように呆然としている。
「あのっ…すみません違うんです!あっ、いや違くないけど…えっと…!」
「お…、おう…」
慌てる光と死ぬほど照れてる倉持先輩を見るのはすうっごく面白いけど、どんどん白くなっていく御幸先輩が不憫すぎて…それも面白いけど。
「そうじゃなくて!御幸先輩とどっちがって話をしてて!」
無意識に御幸先輩に追い打ちをかける光。
「あれぇぇ〜〜〜?そうだっけぇ〜〜〜?」
「もう黙って司!!」
「あっ、でもぉ好きな人はまた別みたいです〜!」
「もおぉ…!!」
一応フォローを入れたものの、有頂天の倉持先輩と燃え尽きている御幸先輩、どっちの耳にも入っていそうにない。こんな面白いことになるとは。
「ほんとあの…気にしないでください!!冗談です!!」
「顔赤いよ光〜〜」
「うるさい!」
光が逃げたので私も先輩たちを放ってその後を追った。
さて…どうなるかな〜。