期末テストが終わり、あっという間に明後日から冬休み。

しばらく花城と会えないと思うと、なんだか気持ちが焦る…。
しかも今日はクリスマスイブ。朝からなんだか皆浮き足立っていて…。

「あ〜…やっぱ冬休み前に告ろうかな」
「えっ、マジ?…今日とか?」
「だってしばらく会えないしさ…」

…朝食中にそんな会話をしてる奴までいる。

そう…自慢じゃないがそれなりにモテるから俺は知っている。こういう時期、告白とか増えるんだよな〜…!!
花城…めちゃくちゃ告られてそうだ。

「大丈夫か?」

朝から上の空だぞ、と倉持に突かれながら登校し、昇降口に入ると、俺の下駄箱のそばに相川さんが立っていた。
あ…なんか嫌な予感。

「あ…み、御幸君。」

赤い顔で俺に声をかけてくる相川さんに、全てを察したような白けた顔をした倉持が、俺を軽くどついて無言で離れて行った。

「お、おはよう。ごめんねいきなり…ちょっと話したいことがあって…」
「…今?」
「う、うん。…放課後は忙しいかなと思って」

確かに部活があるから…でも、朝一番に告白とは肝が座ってる。

「まー…いいけど」
「あ…ありがとう。じゃあ、ちょっとこっちに…」

相川さんについて行き、昇降口を突っ切って中庭に出た。流石に朝からこの寒空の中庭にいる生徒は誰もいなくて、相川さんと二人きりになった。
相川さんからの好意には気付いてた…けど。
まさか今日、行動を起こしてくるとは…。

「あの…ね。」
「…うん」

相川さんって…

「もうすぐ、冬休みだから…」

…胸、でかいよな…。

「ら、LINEとか、教えてほしくて」
「…え?」
「だ、だめかな?」

…告白じゃなかった。

「あー…いや…俺、ガラケーなんだよね」
「え…!」

相川さんの顔が赤くなる。

「そ、そーなんだ…。あ、じゃあ、メアド…とか」
「…ていうか…悪いんだけど…」

俺の言葉に相川さんが身構えたのがわかった。
だけど…俺は…

「俺…好きな子いるから、他の女子とメールとかはできない」

ぐっと息を呑む相川さん。その目が揺れ、唇が震える。

「そ…」
「……。」
「…そうなんだ…。」

…沈黙が流れた。でも、これでいい。

「…ごめん。じゃ。」

俺は短く言って、踵を返して校舎に戻った。
まあその肝心な好きな子…花城の連絡先は、知らないんだけど…。

…俺も勇気を出して…聞いてみるかな。
今日はイブだし…冬休みに入ったら、会えなくなるし…。


***


休み時間、勇気を出して一年の教室があるフロアに行くと、階段下の広間に花城と東条が一緒にいるのを見つけた。

東条が話しているのを、柔らかな笑顔で頷きながら聴く花城。
なんだか…雰囲気が変わったような。前はもっと…なんていうか…仲は良かったけど、花城が東条に向けるあんな顔は…見たことない。

…なんか、いい雰囲気?

「メリークリスマスイブ〜」

邪魔をしてやる気持ちで二人に近づくと、俺を見た二人は心なしか顔を赤くした。…なんだその怪しい反応は!?

「あ、御幸先輩!こ、こんにちは」
「…どうも」

礼儀正しく立ち上がる東条と、ベンチに腰掛けたまま俺をチラリと見上げる花城。

「何、お前らってそういう関係なの?」
「え!?ち、違います」
「……。」

慌てて否定する東条に内心安堵する。花城には呆れた目で睨まれたが…。
…それにしても。東条がいるとさすがに聞きづらい。かといってわざわざ花城を別の場所に呼び出すのも、なんかガチっぽくなって教えてくれなさそうだし…。
あ〜、パッと会ってサラッと聞こうと思ったのに…。

「…何か用ですか?」

俺がずっと前に立っているからだろう、花城が訝しげに聞いてきた。まずい。

「え?いや別に。飲み物買いに来ただけだし…」
「……。」
「……。」

無言の圧を感じる…。絶対違うだろっていう…。
俺は気づかないふりをして自販機に向かい、温かいミルクティーを買った。これ、よく花城が飲んでるんだよな…。

「…でさ、俺は絶対違うだろって思ったんだけど」
「うん。ふふふ」

…また仲睦まじそうにおしゃべりを始めた二人の姿を横目に見て、俺は思い切った。

「花城!」
「え?」

軽く放り投げたミルクティーのペットボトルを、花城が危うくキャッチする。

「ナイスキャーッチ」
「な、なに?」
「それやるよ。」

我ながら、自分の不器用さに泣けてくる。

「冬休み…俺のこと忘れんなよ!」
「はあ…?」

ふざけた泣き真似をしながら逃げた俺の背中越しに、二人の笑い声が聞こえる。
なにあれ、あはは、なんて。
…結局連絡先、聞けなかった…。

俺ってこんな臆病だったのか…?
相川さんがどんなに勇気を振り絞ったか…

…そう考えて胸がチクリとした。

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