「花城っ!おはよ!」

新学期が始まり、俺は幸せいっぱいだった。
早々の席替えで、花城の後ろの席になれたのだ。

「おはよう。」

あんなことを言った後だけど、花城とは普通に話せている。ただ、全くの対象外だったのが、俺をほんの少し意識してくれるようになったのは感じるし…言ってよかった、と思う。

「昨日渡し損ねたんだけど…はいこれ。」
「え?何?」
「冬休み、じーちゃんち行ったからさ。お土産!」
「私に?」

ありがとう、と微笑む花城の笑顔。これが見られるなら、俺は何だってしたい。

「友達だろ?それに俺も前、飴貰ったしさ。」

俺がそう言うと、花城が嬉しそうに笑う。友達でいい、今は。花城が喜んでくれるなら…

「おっはよ〜ん」
「あ…鷹野も、はい!お土産」
「えー!いいのー!?」
「鷹野も友達じゃん。」
「うれしい〜ありがとう!」

俺と鷹野のやりとりを微笑んで見つめる花城。来年度もこの三人で、同じクラスだといいな…


***


「花城さーん、先輩が呼んでるよ」

休み時間、クラスメイトの女子が花城にそう声をかけにきた。つられて俺も廊下の方を見ると、そこにははにかんで片手を上げる速水先輩。
花城はクラスメイトにお礼を言って、小走りで速水先輩の元へ駆け寄った。

「最近ますます速水先輩来るねぇ〜」
「そ、…そうだな」

いつの間にか背後にいた鷹野がニヤニヤと俺に耳打ちしてきて、俺はちょっと肩をすくめた。

「一緒に初詣行ったらしいよ〜」
「え…」

鷹野の言葉に頭が真っ白になった。廊下の隅で話す二人の姿を見る。花城が速水先輩に笑いかけていて…去年より明らかに、いい雰囲気なような…。
一年近く速水先輩は花城にアプローチし続けていて…だから、心のどこかで油断してた。花城が好きなのは…速水先輩?

「司〜ちょっと来てよ〜」
「はいはーい」

鷹野は女子に呼ばれて俺から離れて行った。俺はまた花城たちを見る。結局二人は予鈴が鳴るまで話し込んで、チャイムの音と共に花城が教室に駆け込んできた。

「光ちゃん、さっきの先輩って…」
「違う、違う。」

隣の席の女子の興味津々な問いを軽く笑って流して、花城は授業の準備を始めた。


***


放課後、俺はスポーツバッグを肩にかけ…前の席で帰り支度をする花城に、思い切って近づいた。

「花城。」
「あ、東条…」

また明日、と言いかけるように微笑む花城に、俺は切り出した。

「あのさ…」

俺が話し出すと、花城は不思議そうに俺を見つめ、言葉を待った。
その瞳に見つめられると…冷静じゃいられなくなる。

「ら…LINE、交換しない?」

俺は直前で何度も頭の中で繰り返し練習した言葉を絞り出した。顔が一気に熱くなった。
花城は目を瞬いて、頬を赤くした。

「…いいけど…。」

その言葉で喜びが胸に広がる。勇気を出してよかった…!

「さ…サンキュ、じゃ…俺が読み取るから…」
「…うん」

花城のアカウントを読み取って、俺は心臓がどくどくと脈打った。顔がずっと熱い。

「よし、じゃあ、後で送るよ。」
「うん。」
「また明日!」

俺は急いでいるふりをして、花城の顔もまともに見れずに教室を飛び出した。するとそこの廊下でちょうど待っていたらしい信二のニヤニヤした顔に出迎えられ、全てを悟る。

「…見てた!?」
「なんか話してるな〜って…何してたんだ?」
「…いやLINE聞いただけ…」
「へー、よかったじゃん」

信二に小突かれ、俺は唇を引き締める。ついニヤけてしまわないように。

「顔真っ赤だぞ。ははは」
「う…うるさい」

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