「なあ御幸、2年の花城さんと付き合ってるって本当?」
まだ挨拶くらいしかしたことのない、新しいクラスメイトの男。この質問は今年度に入って10回くらいは聞かれている。俺は引き攣る口で答えた。
「ああ、まあ…」
「えっ!そ、そうなんだ。…なあ、マジだって!」
そいつは俺が頷くや否や、さっさと踵を返して友人の輪に入り、噂を広げに行く。
「マジでうぜーわお前」
「なんでだよ…」
隣にいた倉持は俺をどついて睨みつけてくる。いつまで続くんだ、こういうの…。
***
「なんか疲れてる?」
昼休み、光に心配そうに顔を見つめられた。つぶらな瞳に俺の顔が映ってる。
「いや、今吹っ飛んだ♡」
「あ、そう」
…相変わらずドライだなぁ。
俺は苦笑して空を見上げた。ここは中庭。放課後は毎日部活があるから、光とこうして過ごせるのはほとんど学校の休み時間しかない。
「なあ…今度の日曜日の午後、暇?」
それから土日どっちかの午後。それも、これから地方予選の時期が近づけば難しくなるけど。
「うん。」
休日の予定を聞くと光は嬉しそうにはにかんでくれる。あ〜、癒し…
「じゃ…会える?」
「…うん。」
「今度はどこ行くか…」
ゆるむ顔を誤魔化してそう呟くと、光もうーんと唸る。
「私は別に、どこか行くんじゃなくて…会えるだけでいいけど」
「え…」
思いがけない言葉に俺は虚を突かれた。正直なところ限られた時間と資金でデートのプランに困っていたからありがたい言葉だけど…
せっかく光に会えるのにそんな適当な感じでは、光に退屈だと思われる気がして…
「あ…それじゃ先輩、つまんないか」
「え、いやいや、俺は全然…」
…まあ…無理して今までみたいな張り切ったデートばかりしてたんじゃ、俺がもたないかも。
光とはもっと自然に…落ち着く時間を過ごしたい。
「…まあ…そうだな。俺も会えるだけで嬉しい」
「……。」
思い切って言ったセリフに光の反応がないと思ったら、少し顔を背けた光の耳が真っ赤になっているのを見つけた。
可愛い。抱きしめたい。
「二人でゆっくりできるところとかで…」
「……。」
その思いのままを口に出して、はっとする。
…なんか今すげぇ下心丸出しみたいなセリフ言った!?
「…う、ん…」
光はぎこちない笑みを滲ませ、赤い顔を逸らす。
「いや、変な意味じゃなくてだな」
「…何が?」
「今なんか変な空気になったから」
「そんなこと…。」
光は困ったようにはにかんで、髪をいじった。
やっぱりまだ…そういうことは早いと思う。光のこの反応。でも、だからこそ愛おしい。
俺は今この瞬間にだって、抱きしめて…何なら押し倒して…色んなところにキスをして……いろんな妄想が頭を駆け巡るけど、それを振り払い、光の頭に触れた。
「公園で散歩でもするか。花もキレーな時期だし」
「…うん。」
光は俺を見上げ、花が咲いたような笑顔で頷いた。