君に触れていいのは僕だけ。
それ以外は許さない。
「ちょ、周助!」
バタン、と屋上のドアを閉める。
昼休みは鍵も開けられ、生徒も先生も出入りは自由だ。
ただ、今の季節は冬。屋上は人気がなく、僕達以外は誰もいないようだった。
「きゃッ!」
僕は少し苛立っていた。
その原因は、僕の彼女である雫。
雫を壁に押し付け、距離を縮める。
さらりとしたセミロングの髪を掬い上げ、自分の口元へ押し当てた。
「ね、周助。近いよ……?」
「言うことはそれだけ?」
「何を怒って……ン、ッ!」
雫が言葉を綴ろうとして、それを唇で塞ぐ。
舌を絡ませると、この場所にはにつかわない音が頭の中に響いた。
その動きに合わせて雫の呼吸が乱れ、口元からは甘い声が漏れはじめる。
僕らから白い吐息が出ては消えていった。
「ふっ……ン、……ッ!」
僕を惑わし煽る甘い声。
この瞬間が、たまらなく好きだ。
雫の身も心も僕のモノだと実感するから。
暫く熱いキスを贈ると、苦しくなってきたのか雫が軽く背中を叩いてきた。
名残惜しげに唇を離すと、雫は大きく一つ息を吐く。
その顔は真っ赤で瞳は潤んでいて。
ここが学校じゃなければ、即続きを求めてるところだ。
「も、ぅ。周助のキス、長いんだから……」
「でも気持ちいいでしょ?」
「ッ!バカ……。そんなこと、ここで言わないでよ!」
赤い顔が更に赤くなる。
そんな雫は可愛いけど、僕の苛立ちを抑えるまではいかない。
「ねぇ、雫。何、話してたの?」
「何って……?」
「仲良さそうに話してたよね?僕の知らない男子と」
「あ、あれは……。テレビ番組の内容とか……ッ!」
「内容…とか?」
雫が顔を逸らした瞬間、白くて綺麗な首筋に唇を宛てがう。
舌を這わすと、ピクッと雫の体が震えた。
僕は構わず話を続ける。
「それで?どんな内容なの?」
「ぁ……ッ!お笑、い芸人の……ドッキリ、ッ!やぁ……っ」
「ふーん。で?肩、触られたりして楽しかった?」
「触られ、たりなんか……してな、い……ッ!」
そこで首筋を少し強く吸う。
すると、雫の体が大きく跳ね上がった。
「あッ!や、だ……ッ!」
唇を離すと、白い首筋にうっすら赤い跡が残った。
僕は満足げに雫を見ると、雫はその跡に気付いたように左手で首筋を覆う。
「君は僕の彼女。誰にも渡さないから」
「そんなの当たり前じゃ……あ!」
「何?」
「しゅ、すけ……。もしかして、嫉妬?」
そう。
僕の苛立ちは、ただの嫉妬。
雫が他の男と楽しげに話してたり触れられたりしたら、流石に僕だって苛立ってしまう。
だから……。
だから僕は…雫は僕のモノ、という証を残した。
我儘だと思うけど。
「もう……。こんなことしなくたって、あたしは周助のモノだよ?」
「分かってる。けど……」
「……不安にさせちゃった?」
少し俯いた僕の頬に、雫はそっと右手を添えた。
暖かい、雫の熱が伝わる。
不思議とさっきまでの苛立ちが収まって、やっぱり雫は凄いな…なんて思った。
「想ってくれてありがと。あたし周助が好き、だよ……」
「こうやって触れるのは僕だけにしてね。もちろん、触れていいのも僕だけだけど」
「はいはい」
「あ、ずいぶん適当だなぁ……。ちゃんと分かってる?」
「分かってます!」
抱きしめ合ってキスをした。
僕からの愛を、君からの愛を確かめるように。
これからもずっと……こうやって触れ合っていく。
そう、ずっと。
だから―――……。
触れていいのは。
(ねぇ……この跡、どうすればいいの?)(ん?雫に触った罰だから、そのままで)(……あたしが恥ずかしいっつーの!)- 3 -*prev | *next *Sitetop*or*Storytop*