ShortStory

そこにあるのは愛、なんだ



そう、愛……なんだね。

そんな気がする。










「周助のバカ!もういいよ!」
「何でそんなことで怒るんだよ」


あそこで言い合いしてんのは。
俺の親友でもある不二と……。
その不二に唯一バカって言える彼女の雫ちゃん。

あーあ。何、やってんだよ〜。毎度毎度、ホント飽きないなぁ……。
せっかく好きな人と一緒にいるのに、何で喧嘩するかな。

バタバタと教室を出ていく雫ちゃんを横目に見送って、俺はご立腹の不二に近付いた。


「ふーじ。どうしたんだよ」
「英二」


うっげ〜!機っ嫌悪〜!
いつもは嘘くさい笑顔で冷静に怒る不二が、目ぇ見開いて怒りオーラ全開。
誰も近付こうとしない。
まぁ、さわらぬ神に祟りなしってヤツだよね。


「……何か言った?」


開眼状態な不二は、人の心も読む。


「いんや〜別にぃ?それよりさ、何かあったの?雫ちゃんとさ」
「いや、大したことないよ」
「もー怒ってイライラしてんなら吐き出してスッキリしちゃえよ。ほらほら、お兄さんに話してみ?」


不二が座ってる席の前に座って、不二のおでこを人差し指で軽く突いた。
それに応じるかのように、不二の顔が上に上がる。

一つ溜息を吐いて、渋々って感じが拭えないけど。
ぽつり、不二が話し始めた。


「僕の誕生日」
「んあ?明日でしょ?おめでと」
「投げやりだなぁ…。で、プレゼント楽しみにしててねって言われたんだよ」
「うん。よくある話だね」
「だから、何もいらないよって言ったんだ」
「まぁ……それもよく聞く話だね?」
「じゃあ何がいいの?って言うから、雫が欲しいって言ったんだ。そしたら……急に怒りはじめたんだ」


……俺は思わず顔が赤くなった。
欲しいって……公共の場で言うことじゃないし。TPO考えなよ……。
雫ちゃんが怒るのも頷ける。

そしてここだけの話、雫ちゃんはこの不二の誕生日のためにバイト始めてて。
俺に不二の欲しいモノをリサーチしてて、頑張ってそれを用意しようとしてたんだ。


「あんな……。女の子にそんなことこんなトコで言うもんじゃないだろー?」
「わ……。英二にお説教されてる……」
「俺が言うことじゃないけど。つーか黙っててって言われたけど。雫ちゃん、バイトしてて。俺に不二が欲しいもん聞いてさ、それを頑張って用意しようとしてたんだよ?」


あ。
不二が開眼したまま固まった。
うんうん、いかにも驚いてますって感じ。
うぷぷ。何だかこんな不二見るの初めてかも。
ちょっといい気分―――…。


「今、優越感に浸ってるだろ?」


目を細めて睨む不二に顔を背けると、さっきまでの怒りオーラはどこへやら。
席を立った不二は、俺の頭をポンッと軽く叩く。


「有難う、英二。行ってくるね」
「……お、おー!ってかもう五限目始まるよッ?」
「いいよ。雫のほうが大事」


落ち着いた感じで教室を出た不二。
まぁ、そう見せてるだけで内心は焦ってるんだろうけど。
何はともあれ嵐は去ったな。




昼休みの終わりを告げる鐘がなる。
結局不二は、午後の授業をぜーんぶサボることとなった。


























放課後。
俺は自分の荷物の他に、不二のテニスバックと雫ちゃんの鞄を抱えて二人を探すこととなった。


「……何か損してる気分……」


既に行きそうなところは全部回ったつもりなんだけど。
保健室に屋上、図書室に人気のない特別棟の教室。
見付けないほうが逆にいいような気がしてきた。
ここまで来たら、不二の呪いとしか言いようがない。


「まぁいいや。荷物部室に持っていっちゃうか……」


放課後は各クラス掃除があるから、部室にはまだ誰も来ていないはず。
俺は不二を探すことを口実に、掃除をサボってきてる。
荷物を置いて二人を探そう……そう考えてたら、その部室から明らかに男女二人組の話し声が聞こえてくるじゃないか。


「――――……まさか」


その、まさか。
部室の小窓を少し開ければ、俺の探し人はまさにここ。
俺達がこの後利用する男子テニス部の部室で、何だか割って入り込めない雰囲気を醸し出していた。


「ね、時間……平気?きっと英二君、探し回ってるよ?」
「他の男の話なんてしないで?今はまだ、こうやって雫と一緒にいたいんだから……」


あーもー……。
何だこの雰囲気はッ!
何で不二はワイシャツ一枚なわけ?
何で雫ちゃんは制服が乱れてるわけ?

ここは学校!
しかも部室!
俺、これからここで着替えたりするんだよ?
いちいち思い出しちゃうじゃんかッ!


「でも……英二には感謝しなくちゃね。こうやって雫の隣にいられるの、英二が取り持ってくれたからだし」


俺は不二からその言葉を聞いて、開けた小窓をそっと閉めた。
その後から聞こえてきたのは、二人だけの甘い時間。

何で喧嘩してまで一緒にいるのかって。

そこには愛があるからなんだよな。

見せ付けられた感は否めないけど、俺は不二の親友である限り……二人は大事だから。
仲を取り持ってやりたいな。


なーんてね。
まぁ、誕生日に喧嘩別れなんて俺も居心地悪いからね。




「たんじょーびおめでとー!」




相思相愛の二人に送る言葉。















そこにあるのは、愛なんだ
(で…俺はいつまでこーしてりゃいいの?)(アレ?英二先輩、どーしたんスか?)(桃!い、今は入っちゃダメだよ!)(……は?)

*〜*〜*〜*〜*〜*〜*〜*〜*〜*〜*〜*〜*〜*〜*〜
不二君のBD夢でした!
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