気付いたら目で追っていた。
初めは、良く笑うコだなぁ〜って思った。
不二の彼女のからの紹介?の時、夏の太陽のイメージそのものだと思った。
一緒にお昼食べたりしてるうちに、すっげー喜怒哀楽がハッキリしてるコだって気付いて。
雫ちゃんの相談からか、よく俺に不二のこと聞きに来るようになった。


「ね、菊丸君!聞いてる?!」
「聞いてる聞いてる!俺がそれとなーく不二に聞いとけばいいんでしょ?」
「ふふ、おっけー!全く、雫って頑固な割に小心者って言うか」
「まぁ〜しょーがないよね。不二ってなかなか本心言わないし。喧嘩の原因って、不二がモテるからでしょー?」


五時間目の休み時間。
大野さんはわざわざ俺のとこまで来て、何とか喧嘩してる二人を仲直りさせる為の策を練ってるらしい。
廊下を吹き抜ける、外とは違う夏の風にスカートが少しユラユラしてるのを見て『あー海行きたいなぁ〜』なんて考えてた。

コロコロ変わる大野さんの表情を見て、ここまで誰かの為に行動出来るってすげーなーなんて感心してたら、大野さんに不意に顔を覗かれた。


「言っとくけど、菊丸君だってモテてるからね?」
「はぁ? 俺が?!」
「ウチのクラス、よく聞くよ? 菊丸君って可愛いよね〜とか面白い〜とか」


か、可愛い……ねぇ。あんま嬉しかないなぁ……。


「私はカッコイイって思ってるけどね」
「……ンん?!!」
「え?おかしい?」
「いや、おかしいって……ソレ俺に聞くの?」


思わず吹き出しながらツッコんでしまった。


「アハハ! それもそーだね!ごめんごめん。でも、私はカッコイイ菊丸君好きだけどな」
「…………ンん?!!!」


ちょ、何言い出すのこのコ!恐ろしいッ!
やべ……どんな顔していいか分かんね……。

火照り始めた顔を手でパタパタと扇ぎ始めると、タイミング良く授業始まりの予鈴が鳴った。


「じゃー宜しく!」
「あ、うん。おっけー!」
「あ、……ねぇ」
「うん?」


教室に入ろうと踵を返したとこで、大野さんに呼び止められた。
さっきまでのコロコロ変わる眩しいくらいの笑顔から、急に真剣な眼差しに変わって。
思わず喉元がなった。
こんなにも目が離せない事なんてある?
一旦下がり始めた体温が、上昇しようと準備してるみたいだ。


「ねぇ。英二って呼んでいい?」
「はぇ?!」
「折角仲良くなれたのに、いつまでも苗字で呼んでるのに違和感あって。ダメかな?」


ちょっと!上目遣い使うな!
姉ちゃんが俺を小間使いする時みたいだ!俺はコレを断れない……。いや、今、断る理由もないけどさ?

だけど、そんな思考とは裏腹に、身体の温度がどんどん上昇していく。
さっきとは全然違う。顔が熱くて変な汗が出る。


「い、いいよ。別に……」
「良かった!じゃーまたね、英二!」


ニコッと笑い、するっと身体を翻して、教室に消えてく彼女。
その後をいつまでも見つめてしまう。


「にゃはは〜……ダメだこりゃ」


ようやく自覚した。
馬鹿みたい。なんだよ、俺。

その場で、力が抜けてへたりこんでしまう。
熱くて熱くて、今にもどうにかなりそうだ。


「英二?」
「……不二ぃ……。どうしよ、俺……」


呼びに来た不二が、不敵な笑みを浮かべてる。


「ようやく気が付いた?好きなくせに、見てるこっちは歯がゆかったよ?」









好きなくせに馬鹿みたい
(菊丸。お前、廊下で授業受けるか?)(ひぇっ!ご、ごめんなさいぃぃ……!)

好きなくせに馬鹿みたい

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