言っとくけど、俺だって男なんだからな。
こんなにそばにいられたら、やましい気持ちにだってなっちゃうんだからな。










「英二の部屋にくるの、久しぶりじゃない?」


部活が試験休みに入った。
試験勉強してない俺を心配した紬が、俺の家にきて勉強をみてくれることになって。

本当なら不二に勉強頼もうと思ったんだけど、睨みきかせてきたらそっと身を引いたのが放課後。
(因みに、放課後というワード出した瞬間に睨んできたんだよ!怖かったわ!)
不二だって雫ちゃんとイチャイチャしたいもんね。部活休みだもんね。そりゃそーだよね。

俺だってそうだもん。こりゃ失敬。


「そだねー。前きたのいつぐらいだっけか」
「えー覚えてない。なんか不二とか雫とかもいたよね?」
「あ、じゃあ前の試験のときじゃね?あれから部活忙しくなっちったから、放課後誰かン家なんて行けてないし」
「そういえばそうだよね。どう?テニスのほうは」
「そっちはボチボチ。こっちはボロボロ」


部屋の真ん中に鎮座してるテーブルに、一通りヤバい教科の教科書だしたら、若干紬が引いてるのがわかった。
そのまま紬が重いため息をはいて、テーブルの前に座り込む。

あぁ〜めっちゃ文句言いそう。いや、言うね。


「もー授業中寝てるからこんなことになるんだよ?部活を真面目にやるなら、こっちも真面目になんなさいよ」


ほらキター。
彼女のはずなのに、なんだかオカンな位置。
俺は兄ちゃん姉ちゃんにも彼女にも同じようなこと言われる運命なのかなー。


「いやいやいや、不服そうな顔しないでよ。自業自得でしょ」
「紬がオカンみたい」
「英二の前だとみんなオカンになるんだって。なんなら不二が一番オカンだわ」
「姉ちゃんがこないだソレ言ってた!」
「はぁー……料理も家事もできる男が勉強になるとなんで……」


うぐぐ……事実だからぐうの音も出ない。
料理と家事とテニスを、勉強と一緒にしちゃいけねーな、いけねーよ!


「よっし!やれるとこまでやろ!」
「うへぇ〜い」
「返事はハイ!ほら、筆記用具出して!まずは数学からいこ!」
「はーい」


紬が教科書広げ始めたから、冷蔵庫から持ってきた麦茶を端に寄せて俺もノートを広げる。
カラカラと氷がコップにあたって、涼しげな音が耳をかすめた……けど。
そんな風情あふれる音なんて多分、紬の耳には入っちゃあいないな。

だって俺の広げたノート見て絶句してるんだもん。








「…………あれ?」


目を開けたら、まず視界に数学のノートと教科書。そしてその先にベッドが見えた。
それも同じ方向むいてんの。ん?おかしくない?

……って、俺!寝てた?!

ヤバい!紬めっちゃ怒ってんじゃね?!


「ごめん、紬!俺、寝て……」


急いで頭をあげると、不意に右腕に重みを感じた。
その重みを感じる腕を見てみると……これまた寝息をたててる紬が目に入る。

え?紬も寝ちゃってんの?あり?
つーか、勉強全然進んでねーや、俺。
そうそう。二ページ目に入って……定理だかなんだか考えてたら……眠気襲ってきたんだ。
ふへー頭使うと余計に眠くなるの、立証できたじゃん〜。不二は否定してたけどさ、そんなの頭いいヤツだけなんだな、やっぱ。


「紬、紬」
「ん……」


窓の外が薄暗くなってきてる。どれくらい寝てたんだろ……。
もう紬も帰んなきゃ、と思って軽く揺するんだけど……これじゃあ起きない。

……ふっ、可愛い寝顔。ニヤニヤしてんな〜。なんか夢見てんのかな?


「紬。もう帰んなきゃ」
「んー……えーじ……」


もう一度紬の体を軽く揺すると、今度は寝言で俺の名前を呟いた。

夢は俺の夢?えっ、なにそれ可愛い。
なんだか意識し始めたら、とたんに自分の体が熱くなってきた。クーラーきいてんのに。
顔が熱い熱い。そりゃそうだよ。だって好きなコが俺の腕に頭あずけて寝てんだもん。
しかも俺の名前呼ぶんだもん。可愛くないわけがない。

俺だって男だし。そーゆーこと色々と考えちゃうじゃんか。

つーか腕どかせば起きる……よね。
どかせば。

どかせるわけねーじゃん!


「おっ、起きないと……襲うぞー」


決して。決してやましい気持ちがあって言ったわけじゃない。
……ごめんなさい。やましい気持ちはあります。

襲えるような角度してないんだけどさ。
寝てる彼女横にして、モヤモヤしちゃうわけですよ?
だからせめて……これくらいなら許して?
俺の届く範囲……。紬のおでこに、そっとキスを落とした。本当に触れるくらいのヤツ。


「んんッ……!」
「うえっ!なにっ?!」


その唇が離れた瞬間、紬から紬とは思えない声が聞こえてきた。

え。もしかして……起きて、た?


「ちょ、起きてんの?!」
「……っ、ごめん。え、英二がなんか可愛くて起きそびれた……」
「なんだよ、もう!なにやって……」
「や、ホント。……ごめん」


ゆるりと顔をあげた紬は、なんだか耳まで真っ赤に染ってて。その反応に俺は、一気に顔が熱くなるのを感じた。


「……紬」
「なに……」
「多分、同じこと考えてるよね?」
「……な、なに」
「ちゃんとキス、したい」
「……〜ッ、き、そ、き……」
「……ふはッ」
「だ、な、なんなの!その顔!笑わないでよ!」
「いんや〜可愛くって」


更に真っ赤になったから。
俺はそのままの勢いで、紬の唇にキスを落とす。
今にも暴れそうだった紬は、とたんに大人しくなって小さくなった。


「こんなにもソバにいられたら、キスぐらいしたくなるって」
「……エロ英二」
「普通の感情だってば」


テスト勉強は失敗。
だって二人きりになったら、俺の心臓がやっぱり持たないもん。

ときにはやましくなっちゃうって。
それは隣が大好きなキミだから……。











だって好きだから。
(……どうするの、テスト勉強)(明日も紬が教えて?)(やだ)(なんでっ!!)(……だって私が平常心じゃいられないんだもん……)

だって好きだから。

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