「はい。精市」
差し出されたタオルに、俺は思わず呆気にとられてしまった。
「なんだい、急に」
「隠してるフリしてるだろうけど、バレてるからね?」
「え?」
「今日、体調よくないでしょ」
部活の休憩中だった。
みんなのおかげで全国に行けたんだ。だからこそ俺は人一倍頑張らねば、と思ってた。
今日は実は言うと朝からあまりいい調子ではなかったんだ。ただ、部長としてみんなを引っ張っていくためにも、弱音なんて吐いてられないと思ってた。
「バカだねー精市。多分、みんな気づいてるよ?」
「そうかい?赤也辺りにはバレてないと思うんだけどな」
「切原君はアホの子だから。じゃなくて。全国行く前に精市がダメになったら意味ないでしょ?」
差し出されたタオルを頭からかけると、頬に冷たいなにかを押し付けられた。
冷えた麦茶。それを手に取ると、今度はジップロックからなにやら取り出す。
「はい。これは冷やしたタオル。首冷やしなって」
どうしてきみはこんなにも――……。
こんなにも俺のことが分かるんだい?
「何年精市の幼なじみしてると思ってんの」
「ふふ、そうだったな。ありがとう」
この距離感が心地いい。
きみの隣、数センチの距離。
誰にも渡したくない、距離だ。
「あたし、精市の一番の理解者のつもりだからね?」
「……あぁ」
「次が弦一郎君ね」
「それはちょっと嫌だな」
「あーソレ、傷つくよきっと」
「真田にとってはそれくらいがいいんだよ」
夏の日差しが、俺らの距離を変えていく。
きっといつか。きみに伝えるから。