ありがとう

「ありがとう」
「何事?!」


キッチンでおもむろに周助がお礼を言った。
あたしは意味が分からなくて、ただ顔を覗き込むしかできない。

え……?何?まだ味付けすらしてないよ?


「え?お礼言われたくなかった?」
「言われたら嬉しい言葉であるけど、槍でも降るんじゃ……?」
「それはどう言う意味かな」


顔は笑ってるけど、目が笑ってない。
はいはい、冗談が過ぎました。


「でも、本当になんで?」
「ん、君がご飯作ってくれてる姿見たら、急に幸せだなって思って」
「周助……」
「こうやって二人でいられることが当たり前じゃないと思うから」


向き合うと周助は、あたしの手に自分の手を重ねてきた。
触れ合う体温。

周助がそんな事言うから、余計に愛しくなっちゃうじゃん……。


「じゃあ、あたしからも。そばにいてくれてありがとう、周助」
「こちらこそ。僕と共に人生を歩んでくれてありがとう」
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さいととっぷしょうせつとっぷ