「あー……雨だ」
「そうだね」
「周助、今日なんの日だか知ってた?」
「……七夕じゃない?」
「せーかい〜。あーあ一年に一回の逢瀬が」
「灯もそんなこと言うんだ」
「え?誰か言ってたの?」
「英二」
「あぁ……言いそう」
「英二は、織姫も彦星も可哀想って言ってたけどね」
「何気に英二君、ロマンチストだよね」
「だから僕は、地球では雨雲で見えないだけで天の川には天気関係ないよって言っといた」
「そしたら?」
「このリアリストって言ってたよ」
「ふふふ、目に浮かぶ」
「本当のこと言っただけなのにね」
「いやでもさ!やっぱ一年に一回の逢瀬ってこうロマンチックじゃない?」
「灯。ロマンチックに浸ってるところ悪いんだけど、正式な七夕は今日じゃないんだよ」
「……え?」
「旧暦の七月七日が七夕だから、これを新暦に当てはめると今年は八月二十五日なんだ」
「えぇ?!」
「もともと中国の行事が日本にも流れてきたって話だし……」
「……周助、そういうのあたし以外に言っちゃだめだよ」
「なんで?」
「英二君に言ったら『不二なんてキライ!』って言いそう」
「嫌いで結構って言っちゃうなぁ、僕」
「喧嘩買っちゃダメ。英二君負けちゃうから」
「勝てるから買うんだよ?」
「仕舞いには英二君、あたしに泣きついてくるんだからね。泣かせるなら喧嘩しちゃダメ」
「はいはい」
「でもさ〜。一年に一回しか会えないって辛いよね」
「ん?」
「あたしだったら耐えられないよ。周助に一年に一回しか会えないの」
「そうだなぁ……僕も耐えられないかな」
「えっ」
「なに?」
「周助、どっちかというとリアリストだから会えなくても受け入れて平気になりそうなのに」
「灯。きみにとって僕はどういう風に見えてるのさ」
「ふふふ、冗談。嬉しい」
「まったく……困ったお姫様だね」
「あたしは一年に一回じゃなく、一日に数回会いたいな」
「僕は毎秒隣にいたいと思ってるよ」
「これって……」
「これからもずっと一緒にいたいけどな」
「これ……指輪?」
「本当なら満天の星空の下で渡すべきなんだろうけど。生憎今日は雨だから」
「周助……」
「受け取ってくれる?」
「ふふふ」
「どうしたの?」
「周助、リアリストって言われてるけど、本当はロマンチストだよね」
「灯にはバレバレだね。英二には内緒にしといてくれる?」
「どうしよっかな〜。まずはその指輪はめてもらってから考えようかな」
「じゃあお姫様。左手を出して?」
「はい、王子様」