ShortStory

Frustration!



ただの欲求不満なだけ。
きみに触れられない時間が長すぎて。




春先、新生活、新しい人。
目まぐるしく周りが変わる時。
春は暖かいし、新しい生活の匂いがたまらなくワクワクして好きだけど。

生活もリズムも一気に変わるから、慣れないことの方が多くてすれ違うことも増える。


「だぁー!たたいまっ」
「たたいま?お帰りなさい」
「ああー疲れた……。しかも噛んじゃった」


この春の新生活。雫は勤め先で新人教育に抜擢されたらしい。
そちらに手を焼いてるのか、自分の仕事が終わらず残業しまくっている。


「お疲れ様。どうだった?今日は」
「はー……もう口にも出したくない。あのクソ上司め……」
「女の子がクソなんて言っちゃダメだよ?」
「女の子扱いしてくれるの、周助だけだよ〜」


社会人になって既に三年。そろそろ仕事も楽しい時期だろうね。
何だかんだ愚痴は言うけど、好きで入った会社だからって妥協を全然しない雫。
好きな人が何かに一生懸命な姿は、何とも誇らしいよ。

帰ってきて即行、ソファに横たわる。メイクもヨレヨレで。でも……こんな姿でも可愛いって思う僕も、色んな雫を見てきたからかな?


「ほら、服が皺になるよ?着替えたら?」
「はぁーい……。周助お母さんみたい……」
「ふふ、そう?じゃあ雫専用のお母さんになろうかな」
「あー……ダメだ!彼氏がいい。あたしは彼女」
「はいはい。そんな状態じゃあ僕は雫のお母さんになっちゃうから。夕飯は?」
「食べてなーい。ビールがいー」


よろよろと服を着替えに寝室に消える雫。
ココ最近は本当に残業続きで。お陰で二人でゆっくり過ごせる時間がほとんど無い。
まぁ、僕も暇ではないんだけどね。この新生活の折、多少の残業はしてるけど。雫の比じゃない。

簡単な夕飯の準備をしてると、ルームウェアに着替えてきた雫がこれまたのろのろとリビングに戻ってきた。


「お風呂先入る?」
「んー……ご飯食べてから……」
「もう既に眠そうだよ?」
「……周助と一緒にビール飲みたい……」
「飲むのは雫だけでしょ?」
「そーだけどー!周助と本当最近、一緒にいる時間がないから。お風呂入ると余計に眠くなっちゃうし……」
「あれ、可愛いこと言うね」
「ふふ、あたしは周助の前だと可愛いんです」


ふにゃ、という効果音が出そうな笑顔で。
その笑顔に、より満足出来ない自分に気付かされてしまう。
そう。ただの欲求不満なんだ。雫に触れられなくて、ただ、体を重ねたくて。きみを全身で感じたくて。

そんなこと、疲れて帰ってくる雫にはとても言えない。

だけど―――……。


「わーい。いただきま……」
「雫」
「はひ?」
「僕、実は雫に黙ってたことがあるんだ」
「むぐ……えっ!なになに?!」
「僕も最近疲れちゃってね。癒しが欲しいところなんだ」
「あ……周助のとこも忙しい時期だもんね。ごめん、なんか周助ばっかり家事させちゃって……。明日はあたしが」
「それはいいんだ」
「へっ?!」


大きい目を更に大きくさせて、僕の考えが理解できないって顔に書いてある。
それでいいんだ。僕は雫をこうやって不思議な顔にさせるの、好きだから。


「言ったよね?癒しが欲しいって……」
「あ、あの……シュウ、スケ、さん?」
「いやー何かとストレスって溜まるものなんだね。びっくりしたよ」
「ちょ、と!待っ……」
「待てない」


するっと、雫の服の下に手を伸ばす。
滑らかな背中に手を回すと、身体が大きく震えた。
息遣いが荒くなり甘い声が漏れ始め、それだけで僕は気分が高揚して手が止まらくなる。


「ね、ダメ!あたしお風呂も入ってないし、メイクだってヨレヨレ!周助に見せる顔してない!」
「そんなの構わないよ。どんな雫でも僕は好き」
「〜〜〜ッ!嬉しいけど!」
「けど?」
「うぅ……もー周助の欲求不満……」
「正解。雫が足りなさ過ぎて補充しないと生きていけないんだ」
「それはあたしもだけど」


観念したのか、僕の体を押してた雫の手が力を無くす。
そのまま深い口付けを。

僕の身体が雫で満たされる。触れられない時間が長かったせいか、まるで砂漠を潤すオアシスみたいだ。


「ふふ、雫のそういう顔。久しぶりだな」
「も……やめてよ……恥ずかしい……」


真っ赤になって顔を隠そうとするけど、そんなの許す僕じゃないってことは知ってるよね?

離さないよ。今夜は。










Frustration!
(……ね、お風呂入る……)(じゃあ一緒に入ろっか。体流してあげるよ)(い、いい!一人で入る!)(遠慮しなくていいよ)(体力オバケ……ッ!)
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