ペトルーシュカに花束を

23.



あたしと周助の出会いは、高校二年生の時。
噂に聞く青学テニス部はイケメン揃いってことをこの年に知った。


「え?加奈、知らないの?」
「え〜?バスケ部の加藤君とかサッカー部の北山君とかとどっちがかっこいいのよぅ」
「比にならないよ!加奈は外部だから知らないかもしれないけど、中等部はもちろん、高等部だって全国常連なんだよ?」
「ふ〜ん。バスケもサッカーも全国行ってなかったっけ?」
「中等部では全国制覇してるくらいなんだよ!マジで一回見てみなって!」


友達のその台詞に半信半疑で練習を見に行った。
そしたら、その瞬間からテニス部にハマっちゃったのよね。
だって信じられないくらいみんなイケメンなんだもの。あたしのステータスには、絶対合格!っていうくらい。

その中の一人に、あの不二周助がいた。
なんて綺麗でカッコイイんだろって、第一印象はソコだった。
しかも物腰柔らかそうだし、優しそう。


「ねぇ〜あの人。茶髪の人。あの人ダレ?」
「え?あぁ、不二君?二年の不二周助君だよ」
「へ〜!カッコイイね、あの人」
「天才って言われてて、めっちゃテニス強いんだよ!二年では手塚君の次に強いとか」
「あぁ、手塚君ね。その人なら知ってる。アレでしょ?社会人にしか見えないって言われてる人」
「あはは!でもカッコイイよね」
「あたしはちょっとタイプじゃないのよねぇ。その不二君のほうが好きかしら」
「加奈なら隣に立っても似合いそうだよね」
「ふふ、当然。……きーめた。あの人にする」


あたしのお眼鏡にかなう人って、そうそういないのよ?光栄に思って欲しいわ。
だってあたしは誰もが羨む松本財閥の一人娘よ?男子だってあたしのこと放っておかないくらい。悪いけど、男切らしたことないしね。まぁ、大半はあたしのお金とかそういうのに目がくらんでるだけなんでしょうけど。
そんなあたしにピッタリな人。あたしのステータスを更に上げてくれる人。そんな人が彼氏じゃなきゃ……。


「ねぇ、不二……周助君?ちょっといいかしら」
「……えっと、きみは……」
「あたし、二年の松本加奈っていうの。話があるんだけど」


その日、部活が終わったあとに話しかけた。何人か一緒にいたのは見えたけど、そんなのあたしには関係ない。とにかく、この不二君にあたしは話があるの。


「……悪いけど、このあと大事な用事があるんだ。日を改めてもらってもいいかな」


………………はぁ?!
あたしはその瞬間、時が止まったのかと思ったわ。
だってこのあたしの誘いを断った男なんて、一人もいなかったから。
プルプルと握った手が震えた。すっごい屈辱。


「……分かったわ。また改めるわ。あたしのこと覚えておいてねぇ」


聞き分けのいい振りをして、背中を向けた。
あたしは多分、スゴいイラついた顔してる。このあたしの誘いを!断るなんて!信じられない!

ある意味、ソレがあたしに火をつけたんだ。絶対あたしのモノにしてやるって……。



「不二。アレ、三組の松本加奈だろ?なにをしたんだ?」
「乾。知ってるの?」
「俺も知ってるよーん!外部のコの中ではめっちゃ有名だよね?」
「そうだな。よく知ってるな、英二。あの松本財閥の娘だそうだ。氷帝蹴って青学にきたって話だな」
「僕、そういう人と関わりないけどなぁ。他のクラスだと余計に接点ないし」
「うひー!不二もやっかいな人物に目ぇつけられちったね〜!あーゆータイプはこっわいぞ〜」
「自分に自信があって高慢なタイプだからな。大変だぞ?」
「フフ……なるべく関わらないようにするよ」



それからあたしは、毎日テニス部に顔を出した。
出してその度に周助を呼び止めた。たまに嫌な顔してたことも知ってる。呼び止めてはずっとアナタが好きって告白してた。隣に誰がいようと関係なかったわ。
友達はみーんな「あの不二君は靡かない。諦めたほうがいい」って言ってたけど、そんなの関係ないもの。このあたしが欲しいって言ってるんだから、絶対あたしのものにしてやるって思ったよのね。

それが半年くらい続いたのかしら?ようやく周助があたしの誘いにのったのよね。こうなったらこっちのもの。絶対に手放してなんかやんない。



「不二ぃ〜なんで付き合っちゃったんだよー!」
「いや、もうしつこくて。一回付き合って別れれば諦めるかなって思ったんだけど」
「松本が来るたんびにイヤ〜な顔してたくせに!きっとアレは不二を離さないぞ!俺が断言する!」
「あはは。英二に断言されるくらいか。どうしようかな」
「もー!心配してんだかんな、こっちは!」
「まぁ、なんとかやるよ。大丈夫」



そんな周助の思いも虚しく、あたしは付き合ってる間も別れるタイミングなんて与えなかった。
そうこうしてる内に高三の時、大怪我して。テニスの道が途絶えた。だから献身的に支えるフリをして、周助を縛りあげた。誰の手にも渡らないように。
あたしのこと好きだって素振り、全くなかったけどね。別れるようなことがなかっただけ。ないようにしただけ。

だって、あたしの玩具だもの。周助は。
一生、あたしの籠にいれてあたしが楽しむの。遊ぶの。

それが――もうじき叶うってところまできたっていうのに……。
なに?急にあたしの知らないところで外泊なんて。今までそんなこと一回もなかった。
海に行ったことも知らなかった。こんな屈辱、高二のとき以来だったわ。色々としてあげてるのに、少し自由にさせてたらコレだものね。

確かに周助の携帯の位置情報は海だったわ。近くのホテルに泊まったみたいだし。
あたしが機械に弱いフリしてるのはバレちゃったけど、隠しアプリで位置情報監視してるとこまではバレてないみたいね。

ホテルもウチのパパの会社系列だったみたいだし、一応確認とったけど……「お一人でお泊まりでしたよ」って言われたわ。

女の影があったら、絶対に許さない。絶対に別れてなんかやんない。縛りあげて、あたしから離れられないようにしてあげる。
あたしはまだ疑ってるわよ。いつボロが出るのか楽しみだわ。


ね。あたしの籠の鳥。あたしのお人形さん。
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