芸祭から数週間。
最近、大学に行くとなんだか指をさされることが増えたんだけど、なんなんだろ。
今日も授業前から、何人かの女の子があたしを見ながらヒソヒソと……。あたしなんかした?
そういえば、周助さん家に泊まった次の日から始まった変な電話。
電話がある度に着拒してたんだけど、暖簾に腕押し……で、使い方あってる?
毎回かかってくる男の人は別っぽくて。時間関係なしにかかってくるから、周助さんに相談したら登録番号以外は繋がらないように設定して、と言われてその通りにしちゃったんだよね。
「ね、雫!今日、バイトは?」
「紬。ううん、今日はないよー」
あれからすぐ、親友の紬には相談したんだ。
紬は「不二さんの代わりに私が守る!」と意気込んでくれて、アパートに泊まり込みで一緒にいてくれてる。有難いことだ。
「じゃあ、今すぐ帰ろ。もう授業ないでしょ?」
「え?うん。ないけど……どうしたの?」
「道中話すから。行こう!」
慌てた様子の紬が、あたしの手を取って教室を後にしようとする。あたしが席を立つとその後ろのほうで、なにやら噂話みたいなのが聞こえてきた。
「あの子だよね。先生抱き込んで芸祭のポスターに選ばれたの」
「ヤバくない?先輩差し置いて選ばれたからさ。やっぱそうなんだね〜」
「しかも!先生だけじゃないんだって。不倫してるらしいよ」
「え!なにそれ。ただのビッチじゃん!」
…………はぁ?
なにその話。全く身に覚えない……わけじゃないけど、芸祭のポスターとビッチに関しては事実無根じゃ!
「ちょ、それどうい――……」
「いいから、雫!帰るよ!」
眉を下げて今にも泣きそうに焦ってる紬を初めて見た。後ろのコ達が話してたことと、紬がこんなにも焦ってる理由って……。
もしかして、いっしょ……なの?
息荒く最寄り駅まで向かう途中。紬は携帯の画面を見せてきた。
「……なにこれ。ツイッター?」
「そう。ウチの大学のね。ちょっとリプ欄見てよ」
「えぇ。あたしツイッターやってないから、よくわかんないんだよなぁ……」
「ツイートを押すとリプ見れるから」
「んんん?」
言われた通りにツイートを押す。
すると、いくつもの返答が画面に広がった。
へー。こうやって反応見れるんだ。おもろー!
と、楽観的に読み進めていくと……。
思わず固まってしまうような返答が目に入った。
「え。なにこれ。“油絵専攻の相葉雫は、先生を口説き落として芸祭のポスターに選ばれた”って……はぁ?!」
「その下もね、その手のリプで埋まっててさ……。結構信じちゃってる人いんだよね」
「なにそれ!明らかに嘘じゃん!」
「最初は全然誰も反応してなかったんだよ?でも気づいたらどんどん拡散されててさ。果てには大学の悪口まで書かれてる」
「名誉毀損じゃん、普通に」
「それにね、その……不二さんとのこと。それも書かれてるんだよ」
「……え?」
「名前は出てないけど、さっきあのコら言ってたじゃん?ソレ、ツイッターからだと思うんだ」
どういうこと?先生とのことは誤解だとしても、どうして周助さんとのことまで?
……わかんない。一体なんでこんな目に……。
そこでポケットに入れてた携帯が震えたのがわかった。思わずビクッと体が揺れて、それをみた紬がより一層不安な顔してる。
あたしの今の携帯は、電話帳以外の着信はできないから……。変な電話じゃないんだけど、おそるおそる見てみると大学からだった。
「うわ。大学からだ……」
「結構話広がってるからね……」
「あーやだ〜。…………もしもし……」
電話の内容は案の定、さっき見聞きした噂についてだった。そりゃあ先生も全力で否定したんだけど、改めてあたしからも説明して欲しい旨を伝えられる。
「明日、学校で説明してくれって」
「え。明日、休講で休みじゃなかった?」
「そーなんだけど……仕方ないじゃん。紬、明日は?」
「私も今期単位も大丈夫だから、明日は休みなんだ。週末だし、一緒に行くよ!」
「ありがと。ごめんね?」
「なに言ってんの。不二さんからも頼まれてるし、アンタと私の仲でしょ!」
「うん、本当にありがとう……」
紬はあたしの背中をバシバシ叩いて、にっこり笑ってくれた。
さっきまであんな不安そうな顔をしてたのに、紬の笑顔にあたしは何度も救われてる。
大丈夫。あたしにはこうやって信じてくれる友達もいる。回りの噂なんか、気にしてなんかいられない。
それに――……周助さんだっている。
それが今のあたしにとって、最大限の力になってるんだ。- 50 -*prev | *next *Sitetop*or*Storytop*