ShortStory

策略に注意?!



「あー!また負けた!」
「はい、僕の勝ち」


週末、コート整備で部活が休みになった放課後。
せっかくだから、とデートを申し込んだのに彼女の雫は、「だったら家でゆっくりしよ!」と言ってきて。だったら……と久しぶりに雫の家までやってきた。

僕達はどちらかと言うとお家デートが多い。僕も雫もよっぽどじゃない限りあまり遠出はしないタイプだからだ。
雫は人酔いしやすいタイプだし、朝から行動するなら遠出もするけどね。
こういった時間が限られてる場合は、どちらかの家で過ごすことのほうが、お互いに理にかなってる。

今日は雫がゲーム機を買った、なんて話をしてて。じゃあ対戦でも……なんてやり始めたはいいんだけど……。

どうにもこうにも雫は弱い。
普段ゲームなんてやらない僕にすら勝てないんだから。


「もー……周助上手すぎ。家で実はやってるんでしょ?!」
「僕の部屋にないのわかって言ってる?」
「そうだけど!そうとは思えない上手さ!」
「あぁ、じゃあアレかな?」
「アレ?」
「英二」
「あー……意外なところに落とし穴が……」
「落とし穴?でも、英二上手いよ。こないだやったこのレースのゲームだって、英二のほうが勝率高かったし」
「周助でも負けることあるんだね……。あたしが単純に下手なだけかぁ……」


僕のこと、なんだと思ってるんだろう?
コントローラーを置いて、見るからにしょんぼりする雫。かと言って手を抜けば怒るし。
勝負事になると、どうしても感情が忙しくなるのが雫だ。
一喜一憂するから、見てて飽きないんだけどね。

……あ。ちょっとイイコト思いついた。


「じゃあ……ご褒美はどう?」
「え?」
「雫が勝ったら僕からご褒美あげるから、僕が勝ったら雫からご褒美ちょうだい?」
「……えぇっ?!」


ご褒美の内容はなんでもいいんだけど。
僕が雫に要求することなんて決まってるから。それは雫もわかってると思うけど。


「ご褒美欲しさにゲームの腕が上がるかもよ?どう?」
「……それってどっちにしろ喜ぶのは周助だけなんじゃあ……」
「なにか言った?」
「い、いいえ!」
「じゃあ決まり。早速やろう」


さっきまでやっていたゲームで再戦。
英二ともよくやってるレースのゲームだ。
これ、レース中にアイテム持てるんだけど、それが相手に当たるとレースが邪魔できるんだよね。

実は雫、そのアイテムに面白いくらい当たるんだ。
見ててちょっと可哀想になるくらい。


「……周助、ショートカットしないでね」
「それくらいのハンデならいいよ」
「あと、あたしにアイテム使うの禁止」
「僕、そんなに雫に当てたかな」
「さっき赤こうら当ててきたでしょ」
「あー……一周遅れになったやつ?」
「ただでさえ一周遅れだったのに!なんで邪魔するのっ!」
「たまたまだよ。たまたま」


頬を膨らませて怒る雫は可愛いんだけど。
やっぱり勝負事、とりわけご褒美がかかってるからね。
ハンデはつけてあげるけど、手加減はまったくするつもりはないよ?


「じゃあ、僕は最下位からスタートするよ」
「えっ!」
「ショートカット禁止、アイテムも雫には使わない、スタートは最下位から。コレが雫へのハンデね。いい?」
「いいよ!いいよ!よ、よーっし!俄然やる気でてきた!」


さっきまで頬を膨らませて怒ってた顔とは思えないほど、今度はイキイキとした表情でテレビ画面に釘漬けになってる。
付き合って何年か経つけど、本当に雫の隣は飽きない。毎日違う表情を見せてくれる。

だから好きなんだけどね。そういうところが。


「あ、あーー!い、今、抜いた?!」
「雫が蛇行運転してるからだよ」
「ちょ、まっ、え!ちょちょちょ……あー!バナナ踏んだっ!」
「ソレ、僕じゃないからね?」
「き、きたー!キラー!一気に抜いてくよ!って、周助もう最終?!」
「そろそろ一周遅れになっちゃわない?」
「大丈夫!今、四位までき……赤こうらっ!」
「ソレも僕じゃないよ?」


結果は言わずもがな。
順調にゴールした僕はお陰様で一位だったんだけど。

雫はいつの間にか最下位に転落していた。


「ちょっとまって信じらんない。なんで?あたしさっき四位だったよ……?」
「そう言われても」
「周助なんかしたでしょ……絶対そうだ」
「そんな訳ないでしょ。ハンデきっちり守ったよ?と言うか、僕以外はコンピュータなのに」
「そのコンピュータが強いんだって!」
「レインボーなんてコース選ぶからでしょ?何回落ちたのさ」
「………………わかんない」


もう、愕然という言葉がピッタリなくらい項垂れてる雫。僕はそっとその肩に手を置いた。
瞬間、雫の体が大きく反応する。
項垂れたままの頭から、こっちを見る視線を感じた。目や表情は髪で隠れてわからないけど、恐らく怯えた子犬のような目してるんだろうな。


「さぁて。どうしよっかなぁ……」
「あ、あの……周助、さん?」
「ふふ、はい?なんでしょう?」
「なにをご所望で……」
「なにを怯えてるのさ、雫」
「いや、滅相もない!」
「雫にして欲しい僕へのご褒美、なんて決まってるでしょう?」


僕の隣で項垂れた雫を、そのまま抱きかかえて自分の足に座らせる。
可愛い声をあげた雫は、少し不安な表情で僕を見下げてる。でも、その頬は赤く染まってきた。


「な、なに……?」
「そうだな、まずは雫からキスして欲しいかな」
「えっ……!」
「いつも僕からじゃない?たまには雫からして欲しいな」
「って言うか、まずはってなに?!一回の勝利につき一個じゃ……」
「そんなこと僕言った?」
「…………ッ、い、意地悪……」
「はやく。帰る時間、きちゃうよ」


おずおずと、焦らすように顔が近付く。
雫の長い髪が少し僕にかかって、その髪を既に赤く染まっている耳にかけると、ピクリと小さい反応を示した。
目をぎゅっと瞑って、僕の唇なんて見えやしないだろうに……。そこに触れるだけの小さいキス。
手に触れてる雫の体温。服の上からでも高くなってるのがわかる。


「……おっ、終わりッ!」
「え?もう?」
「ダメっ!はっ、恥ずかしすぎて、これ以上あたしからはできない……」


これで満足するわけがないよね。
それを知ってか知らずか。真っ赤な顔の雫は、僕にぎゅっと抱きついてきた。
ソレ、僕を煽ってるって気付いてる?


「仕方ないなぁ……」
「し、周助?」
「僕からも雫にご褒美あげるよ」


結局は僕もこうしたいだけ、なんだけどね。
そのための“ご褒美”だから。










策略に注意?!
(ちょ、も、もしかして初めっからコレが目的で……?!)(あ、バレた?)(なんでこんな回りくどいことを……)(だって面白そうじゃない?雫からのご褒美)
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