12
どこにいるかも分からないままキョロキョロしていると、後ろから頭を押さえつけられた。
「伏せろ、かごめ、さくら」
「……っ!ちょっと!」
「分かるか?すげぇ妖気だ…」
空を見ると大きな月の光を浴びた牛車が飛んでいた。
その中には女の人が乗っていた。
「おふ…くろ?」
「えっ…?」
犬夜叉のお母さんが乗った牛車は巨大な鬼の手によって潰された。
犬夜叉は助けようと飛んだが前方から炎が吹きかかる。
「…!てめぇ……殺生丸!!!!!」
「─!!!!!……せっ…しょう……まる?」
酷く懐かしい響きだ。
何処かで聞いたことのある名前。
「兄って…お兄さん?犬夜叉の?」
「………………………」
「…、…人間の女?…………お前は…」
いつの間にか歩き出し、犬夜叉の前に出て、その姿を見る。
あの煌めく銀色の髪に頬の線。額に月の印に琥珀色の瞳。
「せつにい…?……!?」
「せつにい?何を言ってるんだ?」
「…その呼び方………お前はさくらか…?」
自分でも何で出てきたのか分からないけど、確かにそう言った。
「私の名前はさくらよ?どうして知っているの?」
「………あれは真だったのか……さくら、こちらへ来い。もうお前を失いはせぬ……」
手を差し伸べ、悲しげに光る琥珀。
絶対に会ったことはないのに、何でだろう。
凄く胸が苦しい。それに喜んでいる。
「……私が分からぬか。よい、そこにいろ。」
胸の苦しさに動けずにいると、鬼の手が私を包み、肩の方へと案内される。
「さくら!!てめぇ…さくらは人間だぜ?それにどうして知ってんだ?」
「お前なぞに語ることはない。さぁ、墓の在処を吐いてもらうぞ。」