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「お母様、また殺兄がいないです…」
「全く!こんな可愛らしい女子を置いて何処へ……分かったぞ、また闘牙じゃな…はぁ…」

殺兄はこの犬一族の跡取りともあり、よくお父様と何処かへ出かける事が多かった。

「ふーぅ!おおう!丁度良い、さくらも聞いてくれ。そろそろ殺生丸を旅に出そうと思ったのだが、どうだろうか?」
「殺兄が旅…?」
「旅だと…?お前は何を言っておるのだ。」
「いや、な?この館だけでは飽き足らないだろうと思ってだな。各国を巡らすのも良いかと。」
「殺兄が旅に出るなら私も行く!」
「ふざけるな、足でまといだ。行くなら一人で行け。」
「おおー!さくらはそういうと思った!よーしよし、私が教えてやるから殺生丸を頼むぞー?」
「本当ですか?!嬉しい!お父様ありがとう!」
「本気か…?」
「なに、冗談でこんな事を言うものか。」

私がここに引き取られてから数百年。
私も殺兄も一人の立派な妖怪となった。
その当時は深く考えなかったが、何故あの時お父様は私も同行させたのか。
もういなくなってしまった今では分からないままだ。

「なぁさくら、殺生丸の嫁になってはくれんか。」
「殺兄のお嫁様?」
「あぁ、そうだ。そうしたらずっと殺生丸と一緒だ。」
「ずっと一緒…!うん!私、殺兄のお嫁様になる!」
「ははは!本当は私が嫁に貰いたい位なんだがな!」
「駄目、お父様のお嫁様はお母様だから!」

私が殺兄の元に嫁ぐ意味も、お母様以外にも愛する人を守り、死んだ理由も。