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殺生丸に見守られながらも再び机に向かって、参考書片手に問題を解いていく。
一息つこうと肩の力を抜いたらいつの間にか日は沈み暗くなっていた。

「…あ、ごめんね……せっかく来てくれたのに…」
「…気にするな、もう良いのか。」
「うん、ちょっと休憩。」

来た時から変わらずベッドに寄りかかって座っている殺生丸の隣に座る。

「…あのね、ずっと頑張ってきたけど、ふと思ったんだ。今頃どうしてるかなって。」
「…そうか。」
「そしたらね、急に寂しくなっちゃって。会いたくなっちゃった。」
「…………そうか…」
「でも、あと1ヵ月きったくらいだから…」
「…さくら。」
「…うん。」
「もし、戦国の世とこの世を選べと迫られた時、お前はどちらに生きたいか。」
「え…?」

今……何て…?

「あの井戸が永久に繋がっているとは限らぬ。いつかは終わりも来よう……そんな時、お前ならどちらを選ぶ…?」
「な、何行ってるの?」
「この形見もあの井戸があってこそ力を行使する…いつかは選ばねばならぬ。」

琥珀色の瞳にじっと見つめられ、何も言えなくなる。
私は…何て言えば良いの?
元々はこっちの人間。無理してまで妖怪の殺生丸と一緒にいなくても構わない。
たとえ、生まれ変わりだったとしても私は私。

「…お前の声を聞かせろ…」
「………こんな我が儘言って良いのか分からない…だけど、私は殺生丸の傍に居たい!ずっと、ずーっと!」

私はこの世の人間だけど、そんなの関係ない!
こうやって会えたことにきっと意味がある。
だから、私は誰に何と言われようと殺生丸と生きたい…

「…無論、私もお前と同じだ……だが、それは転生の姿だからではない。さくら、お前だからだ…」