888(屋敷脱出作戦編)

いつもの通り、りんと一緒に殺生丸の帰りを待っていた時だ。

「高くて取れないのか、さくら。」
「奈落…?!」
「どれ、わしが食わせてやるぞ。」

音も気配もなく、背後に立たれていた。
殺生丸は今どこにいるんだろう?!
まだ帰ってこないのかな…?!

「…ふん、その形見を大事に抱えて…わしの屋敷まで招待してやる。」
「い…いやだ………せ………」
「ふふふ、お前のいい顔を見させてもらおう。」


「………何。」
「どうしたんだろう……も、もしかして奈落に連れていかれちゃったとか…?!」
「…………」

気に食わぬ…さくらの匂いがしない。
……この気配。

「…神楽、いるのなら出てこい。」
「……………はぁ…ったく、バレバレかよ…」
「さくらはどうした。」
「あたしはさぁ、気が進まないけど、奈落が呼べって言うからなぁ。」
「神楽さんはさくら姉ちゃんが何処にいるか知ってるの?」
「屋敷さぁ。何でも殺生丸を呼べってな。あたしに着いてきな、案内してやるよ。」
「…………」
「殺生丸様…如何がなさいますか…?」
「良いだろう…案内しろ。」

少なくとも神楽は手を出さぬだろう。
屋敷まで連れていくかは怪しいが…
奈落に辿り着けるというのなら、乗ってやろう。


「はぁ……あたしは騙しもしねぇよ。それにさくらの事は気に入ってるんだ。」
「………」
「ちょっとあいつには借りがあってな…だから、頼むぜ。」
「奈落の目的は何だ。」
「さぁね。悪趣味なあいつの考えなんか分かるわけねぇよ。」
「…………」
「さ、着いたぜ。さくらは一番奥の部屋にいる、じゃあな。」
「……」

何の考えを持って、さくらを攫い…この私を呼んだのか……
目的を見極めれぬが……本当に気に食わぬ奴だ。