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次の部屋に入ると真っ暗だった筈の部屋が、明るくなった。
振り返るとさっきの部屋は真っ暗になっている。
……結界の影響…で見えない、とかいう仕組み?

『さくらの困った顔も可愛らしいな。』
「〜〜〜…!」ゾワゾワ
『部屋が暗く見えるのは、別の結界空間同士だからだ。ふふふ…』
「き……気持ち悪…」

何で私の考えが分かったんだろう……それに褒め言葉のつもりだろうけど、凄い寒気がした。
奈落の事は無視して、紙幕を見ると
[気持ちを込めて、殺生丸に向かって
「ご主人様の事が愛おしい」と言え]

「これは…私に対しての命令…?」
「…………」
『そうだ、何故ならばわしはさくらの色んな表情と…憎悪の顔が見たいからだ。ククク…』
(さぁ…わしをもっと憎め、殺生丸……)
「言えば…良いんだよね。」
「…仕方あるまい。」
「ご……ご主人様のことを…愛してます…」
『……おっと、すまぬ。声が小さすぎて聞こえんかった。』
「えぇ…?!」
『もう一度、はっきりと頼むぞ。』
「う…うぅ……ご、ご主人様の事を…あ…愛してます!」

さくらは顔を赤く染め上げながらも、しっかりとした声で、愛を伝える。
奈落は何も言わず、襖を開け放った。
奈落は何がしたい…こいつは私のものだ…!
……だが、触れていぬだけましか…

「恥じることはない。進むぞ。」
「…言っちゃった……言っちゃったよ……」
『ほお〜…顔が真っ赤ではないか。その可愛らしい顔、もっと見せるのだぞ。』

不愉快な程に楽しげな奈落の声。
人の心を弄んでいるのか。