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涙がまだ溢れて揺らめく足下を見ながら先に進む。
結界は通り過ぎた筈なのに、部屋は真っ暗だ。
殺生…丸…は……?
後ろを振り返っても何もなく、ただ暗闇が広がっていた。
恐怖で心臓が張り裂けそうになる。

「せ…殺生丸…!どこ…?怖いよ…!ねぇ、殺生丸!」

呼んでみても何も返ってこない。
(や…やめて…!奈落!!私は…私は…!!)
頭を抱え込んで、塞ぎ込む。

「っ!さくら、落ち着け。」
「せ…せっしょぅまる…っ…はぁっ、はぁ…」
「息を整えろ…冷静になれ。」
「はぁ…っ…はぁ……ヒッ…はぁ……は…」
「…………そうだ、良いぞ。」
「真っ暗で……怖かった……ぁ…ぁう…」
「私から離れぬ方が良い。」
「うん……ありがとう…」
『恐怖の奈落に落とされたさくらの顔もまた一興…大変そそられたぞ…』

ねっとりと満足気に奈落は言う。
次の襖が開く。
あといくつあるんだろう。
殺生丸の大きな優しい右手が私の左手を包み込む。

「案ずるな…あと3つ位か。蜘蛛らしく8つの部屋があるらしい。」
「残りのお題が酷いものじゃないと良いんだけど…」

次の部屋に並んで入ると、真ん中に短刀が置かれていた。
紙には
[その刀で訴えかけるがいい
お前を嫌う妖怪などいらん、とな]

「この刀で殺生丸を刺せとでも言いたいの?」
「…………」
「…奈落は何がしたいの……意味がわからない…!」
「私の事は構うな、何処でもいい…刺せ。」
「や、やだよ……それだったら私が…!」
『そんな事をしても意味は無いぞ、さくら…殺生丸の血でなければな。』
「…………」
「そんな…」
「刀を持て、さくら。」

震える手で刀を握ったのを見ると、己の手を重ね、首の下を刺す。

「……っ?!」
「…く………っ…」
「な、何で……や、やだ!血を…!」
「よい…今に治る………」
『さくらには少し怖かったか?しかし、刀を落としてしまっては危ないであろう。』
「…………!き、傷が…」
「………これで良いであろう。」
『ふん、仕方ないか。まぁ次が一番の楽しみだからな。』