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この旅を始めて数十年は既に経っているのだろう。
最近殺兄の声も冷水の様に冷え荒んだ。
それにようやくこちらの事も気にし始めたのか、よく声をかけられるようになった。

「……さくら、私は以前より強くなったか?」
「えぇ、剣を使わずとも仕留める事が出来るようになったのだから。」
「そうか……ならば…」
「何か力試しをするの?」
「あぁ、いつかの心底気に食わぬ奴にな。」

その為にあの臭いを今まで記憶の奥底に留め、追いながらも力をつけたのだ。
いずれはあれも道を阻む者…
早めに片付けておいた方が良い。
それが父上と因縁を持つ者だとも知らずに私は挑んだ。

「ここか!あの気に食わぬ下衆がいるのは!」
「──────何だ?人の領地に上がり込む何時ぞやの子犬よ!」
「フッ…私がお前を倒しに来たのだ。」
「は"ぁ"…………その誇り高き意志…ここで崩れ去ってやろう!」
「…!」

あの時と同じく左側から攻撃の手が飛ぶ。
今なら見える、これならば私の敵ではない!

「ほう、あの時と変わらぬか。これは少し見込み違いの様だ。」
「口数が多い、少しは黙れ。」
「ふん!お前なぞ前置きにもならぬ!お前は強さとは何たるかを知らぬ様だ。」
「何…っ!」
「そんなお前を崩落させることなど容易だッッッ!!!!!」
「っ??!!!」

後ろを狙った…?!

「ひゃっ??!!!」
「っ…!敵はこの私だと言っておろう!!!!!」

さくらはこの戦いには関係ない!
私だけを狙え、この下劣者が!