3.イライ

「少し散歩をしませんか?」
「散歩…?」
「えぇ、庭でゆっくりと。」

ゲームに負け、待機ロビーに戻ってくるとイライからお誘いを受ける。
次のゲームは夕方。
特に断る理由もないので、頷く。
するとニコッと笑い、手を繋がれる。


庭に出るとぽかぽかしていて、とても心地よい。
ベンチに座って、日向ぼっこをする。
梟ちゃんも気持ちよさそうに目を閉じている。

「今日もいい天気だ…」
「うん…あったかいね…」

暫く目を閉じて柔らかく射す日光を浴びていた。

「サクラ、何か辛いことはないですか。」
「え…?」
「辛いことや悲しいこと、不安なことはないですか?」
「辛い…ことや悲しいことはない…けど…」
「不安はまだあるんですね。」
「うん…無くなった記憶の中で何か酷いことしてないかな、とか…」
「…大丈夫、あなたは優しい人だ。」
「何か大切なことを忘れていないかな、とか。」
「…忘れてなんかいませんよ、きっと。」
「ここに来る前は、私にも大切な誰かがいたかもしれない…」
「……近くにいるのかもしれません。」
「ふふ、イライは何でも視えるんだね。」

優しい声でゆっくりと諭す。
天眼でどれ程の事が視えているかは分からないけれど、きっと全部本当なんだと思う。

「イライも辛いことや悲しいこと、不安なことはない?」
「私…?ないですよ。」
「ほんと?」
「えぇ……まぁ、一つ言うならこうして誘ったのは…」

夢を見たから。
誰かが泣いている夢を。
それの後ろ姿があなたに似ていたので。



きみが泣いている夢を見たから



(愛しい君が泣いている姿を見たくはない)
(近くにいるのに遠い君は、いつ振り返ってくれるだろうか)