7.イソップ

お互いにあまり話さないけれど、時間と空間を共有する。
背中に凭れながら本を読む時間。
私は一度も不満に思ったことはない。
イソップは社交恐怖症、私は人見知り。
誰かと交友を持つのが怖いはずなのに、イソップは私に興味を持って、告白をした。
私もそんな途方もない程の勇気がいる告白を断る事も、理由もない。
それにお互い遠い所にいた者同士、気も合っていた。
部屋に遊びに来ませんか、とおずおずと言われた時、何をするのだろうかと不安だった。
けれど、こうして程よい距離で個人の時間を楽しめる環境。
特別相手に触れたいと思う事もないから、とてもこの時間が落ち着く。

「……サクラ…さん……ちょっといいですか…」
「…何ですか…?」

珍しく声をかけられたと思うとイソップは正座に座り直した。
私も栞を挟んで向かい合う。

「す、少し…スキンシップをした方が…お互いの絆が深まるらしくて…」
「……良い…ですよ。何でもどうぞ…」
「…で、では…」

両手をゆっくりと広げた。
これはハグを求められているのかな…
そっと胸元に寄り添う。
背中に手を回してギュッと抱きつく。
イソップも緊張した面持ちで背中に手を回す。

「……良いですね…この感覚……」
(意外としっかりしてる……男の人なんだ…)
「落ち着きます……」
「うん……」
「触れられるのは得意ですか…?」
「そこまで…だけど…イソップが言うなら…」
「無理はしないでください……嫌な時は嫌と言ってください…」

顔が近づく。
もしかして…キス…される…?
は…初めてなのにな……
目を閉じて、そっと降ってくる感触に体温が徐々に上がってくる。

「サクラさん…初めてでしたか…?」
「うん…だって…」
「僕もですよ…だって…人との交流がない…から。」
「うん…」
「もう少しこうして過ごしても良いですか…?」
「…良いよ……何だか本当に恋人みたいな事をしてるみたいで…」
「…そう…ですね……たまには時間と空間だけでなく………気持ちも…」
「……私は…イソップといると落ち着くよ…」
「良かった…その……僕が…サクラさんの居場所になれたら…嬉しい、です。」
「もう十分居場所になってると思う…イソップ…好き。」
「…!サクラさん……僕も好き…です……」

もう一度キスをされる。
唇が離れると恥ずかしくて、胸元に顔を押し付ける。
イソップも私を大事な物を守るように抱きしめた。


言葉じゃ伝えきれないから


ゆっくりとお互いの体温を分け合おう