8.リッパー

赤の協会に来るといつも一つのとある後悔が、胸を締め付ける。
それは、素敵な人と会って、結婚をして、幸せな家庭を築くこと…
協会で牧師を前に愛を誓い、契を結ぶ。
さぞかし、それはとても素敵な情景なんだろう。
でも私はそれを叶える事は出来なかった。
出来ないままここに来て悪魔のゲームを繰り返す日々…

「逃げないんですか?こんなに近くにいても気付かないとは…」
「…!!!!!リッパー??!!!」

余程ぼんやりしていたのか、今まで心音が激しくなっている事にも、まるで気づかなかった。

「困りますねぇ…私はあくまで逃げる獲物を捕らえるのが楽しいのであって、痛ぶる事を趣味とはしてませんよ。」
「ご…ごめんなさい……」
「まぁたまには良いでしょう、さぁ解読を続けて。」
「…良いの……?」
「…あんなに悲しそうな顔をした貴女は初めて見ました…愛しい人の悲しい顔は見たくありませんからね。」
「……そっか……」

考え事をしていた私はどうしようもない位に悲しそうだったらしい。
先程までの思いを振り払おうと解読に集中するが、一向に拭いきれない。

「………リッパー、今日は追いかけねぇのか。」
「えぇ、彼女が寂しそうだったのでね。」
「ふぅん。」
「ナワーブくん……一緒に解読する?」
「……おぅ。」
「少し状況把握してきますよ。」

リッパーは居心地が悪いのか、どこかに行ってしまった。

「…ここに来るといつも悲しそうな顔してる。何かあったのか?」
「へ…?……ふふ…そんなに悲しそうに見えるんだね…」
「あぁ…別に無理にとは言わんが、協会に何か思う事でもあるのか?」
「……うん……まぁね…」

ナワーブくんにぽつぽつと考えていた事を話す。
暗号の解読が終わるとけたたましいブザー音が鳴り響いた。

「……だからね、ここに来ると考えちゃうんだ…」
「……なら、俺達が叶えてやるよ。」
「叶える…?」

どういう事だろう。
ナワーブくんが走っていった先には仲間とリッパーがいた。
何か耳打ちすると皆は頷き、私を手招きする。
小走りで近寄ると、ウィラが私の隣に立ち、腕を持つようにされる。
赤い絨毯の上をウィラと共に歩く。
途中で止まり、行きなさいと言われ、リッパーの隣に並ぶ。

「ンン…新郎リッパー、あなたは……」
(…これってもしかして…)

牧師の真似をして決まり文句を言うナワーブの顔をつい凝視してしまう。

「サクラ、お前もリッパーと共に生きる事を誓うか?」
「……はい、誓います…!…ありがとう、みんな…今とても幸せだよ…!」


ずっと夢だったから


地獄のような日々でも貴女には笑っていてもらいたい