9.范無咎

「無咎……無咎…離して…?」
「嫌だ……」
「………」
「もうちょっと俺といてくれよ…」
「いる…いるから、離して…?」

暗号が1つ残ったまま、残りの3人は荘園送り。
走った先に偶然ハッチがあってホッとしていると、ワープで飛んできた無咎に力強く抱きしめられ、身動きが取れなくなった。
やんわりと言い聞かせると、ようやくのそりと離してくれた。
相変わらず不機嫌そうな顔だ。

「テントの中に行こう?座ろうよ。」
「ん…」

私の後をのそのそと着いてくる。
ベンチに座ると隣にドカッと座り、傘を静かに横たえる。

「どうしたの?」
「………」
「………」
「今日はもう会えないんだぞ…?」
「うん?」
「明日も夕方まで会えないんだぞ?!」
「う、うん…」
「寂しいだろ?!」
「うん……寂しいね…」
「………なんかあんまり寂しそうじゃないなぁ?」
「えぇ??!!!さ、寂しいよ!ただ、なるほどなぁって思って。」

急に訳も分からないまま力強く抱きしめられて、何かあったのかと思っていた。
けど、理由は凄く簡単な事でちょっとだけ安心した。
ぎゅっと抱きつく。
無咎は後頭部と腰に手を回すと、ベンチに寝かされた。

「……???無咎?」
「補充……」

本当に補充するだけ…なのかな…?
膝の間に足を割り込まれ、顔を覗きこまれる。
この格好は夜の時にも………

「サクラ…」
「…無咎………」

キスをされる。
何度も触れるだけのキス。
それから力強く抱きしめられる。
足を絡められ、耳元で何度も名前を呼ばれる。
無咎にその気があるのか、どうなのか分からないけれど、恥ずかしくて堪らない。

「無咎……恥ずかしいよ……」
「ん……」
「んんっ…!ん……ふっ……」

深いキスをされて何も言えなくなる。
チュッ、チュッとリップ音が何度も静かなテント内に鳴り響く。
苦しくて息があがる。
無咎の息遣いもだんだん荒くなっているような…
と、不安に思っていると首を舐めあげられる。

「無咎…??!!!ちょ…ちょっと…」
「…ちょっとだけ……」
「ど、どうしたの…?!いつもはこんな事しないのに…」
「………別に」
「あ……や、だめ…!」
「ハッチから出ちまったら、もう明日の夕方まで会えなくなるじゃないか…」
「そうだけど…」
「……そんなの寂しすぎるだろ…」

…あぁ、きっと彼は昔の事を思い出しているんだ。
友人を待ち続けたあの日の事を。



もうすぐさよならだから



考えてしまう
…会えなくなってしまったら、どうしようかと