私立の高校らしく豪華で気品溢れるテーブルに椅子、おまけにカーテンまでフリル満載のこの部屋は、生徒会室。通称、駆け込み寺。私がそう呼ぶにあたってちゃんとした理由がある。

「でね、すっごく怖かったんだ」

朝あった出来ごとを一通り話し終えると、彼が淹れてくれた暖かい紅茶に口を付けた。うん、やっぱりおいしい。

「それは災難だったね。呼んでくれればよかったのに。」

そう言って優しく笑うのは、ひとつ上の幼馴染のたっくん。
テーブル越しに座って顎に手を添えてる姿すら絵になる人。少し長めの落ち着いたココア色の髪に、甘いマスク。「とにかく存在がスゥイートよね」なんて咲子は言ってたっけ。

「たっくん呼ぶのはなんとなく卑怯だし、なんか可哀想だもん」
「いじめられてるのに?」
「だってたっくんが好きだから私が嫌いなんでしょう?」
「そうだとは思うけど、なまえがいじめられるなら俺は黙ってられないよ。」

確かに優しくて欠点のないたっくんは誰から見ても素敵だし、好きになるのもわかる。けど、なぜか私はたっくんに対して恋愛感情を持ったことは一度もなかった。

小学校の時、道に迷ってた私を助けてくれたのがたっくんでそれからというものずっと頼りにしてきたし、友達にも話せないことを言えるのがたっくんだった(昔、初めて生理が来た時びっくりしてたっくんの元に走ったら真っ赤になったたっくんが保健室に連れて行ってくれた覚えがある。)

そんなたっくんだから、今となっては完全に“お兄ちゃん”として見てる気がする。

「大丈夫だよ。今日は、同じクラスの水嶋くんっていう男の子が助けてくれたし」

そう言った瞬間に、なんとなく彼の表情が変わった気がした。
…なんとなく、だけど。

「へえ、あいつがねえ…」
「水嶋くんの事知ってるの?」

小さく呟いた彼に首を傾げて聞くと、いつもと同じように、にっこりと笑って言った。

「知ってるも何も俺ら従兄弟だもの」

水嶋くんと、たっくんが…従兄弟!?

「えっ!?」
「あれ?言わなかった?」
「聞いてない、聞いてないよ。」

顔が似てると言えば…うーん?だし、名字だって違うし。でも長身ってところは同じかもしれない。

「あいつは母さんの妹の子。」

たっくんのお母さんは何度か見たことがある。この親にしてこの子あり、って感じですごく綺麗な人だった。だからきっと水島くんのお母さんも綺麗な人なんだろう。
…あ、そうだ。

「ねえ、水嶋くんってどんな人?」

従兄弟だもの。他の誰に聞くよりよく知っている筈だ。

そう聞いた私に彼は少し困った表情を浮かべて、

「教えてあげてもいいけど、」

生徒会室の真っ白な壁に掛かった時計を指差して、言った。

「美術部、いいの?」

私の所属する美術部は週に2回の活動があり、今日は月曜日。その1回だ。

「ああ!いけないっ!」

私は慌てて鞄を引ったくり、たっくんにお礼を告げると生徒会室を飛び出した。
ALICE+