お変わりないようで、
"明けましておめでとうございます、今年もまあ体とかに気をつけて"
独特の字で書かれたそれは、遠く離れた幼なじみから毎年欠かさずに届く年賀状。
東京に引っ越すまでずっとお隣に住んでいた玲於くんとは親同士が仲良しで、よく一緒に公園に行ったり漫画を読んだり駄菓子屋に行ったりして遊んでいた。
小学生の何年生の時だったか、玲於が引っ越してから年賀状が届くようになった。
中学生になっても、高校生になってもそんな関係は続いていて、玲於くんってこんなにマメな人だったかと感心したり。
そしていつの間にか芸能人になっていて、さらに距離が離れたなぁなんて思っていたけど変わらずに年賀状だけは届いていた。
大学進学時に上京して、玲於くんに会えるかなぁなんて思っていたけど東京は広かった。年賀状に書かれた住所を見ても全くわからないので、会うことは諦めた。
最後にあったのは8年くらい前なわけだし街ですれ違っても気づかないよなぁ……。
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バイト先の本屋でレジに立ちながら近くにあった雑誌を読む。平日の真昼間、お客さんはまばらだし、まぁいいだろ。
へえ、玲於くん載ってる。こんなおしゃれな格好しちゃって…一緒にブランコで遊んでいた頃が嘘のようだよ。でもまあ元気なようで安心です。
「あの、会計いっすか」
『あっ、すみません。どうぞ』
「っす、」
危ない危ない。お客さんがいたとは気づかずに熟読してしまった。
サングラスに深く被ったキャップ、ダルそうな雰囲気のお兄さんがレジに置いたのは昔よく玲於くんと読んでいた漫画の単行本で、まだ続いていたのかとビックリした。
『1点で540円になります、カバーは付けますか?』
「あ、お願いします」
フィルムを剥がしてお店のブックカバーをかける。ほんの30秒くらいの作業だけど、お兄さんにガン見されているような……。怖い、東京怖いよ。
「山田……」
『はい?』
なぜ名前…あ、名札か。
「ならほど…、そっかそっか」
『えっと…何かございましたか……?』
「いや、何でもないっす」
『……?じゃあこれお品物とお釣りです。ありがとうございました〜』
「あの、すませんこれもください」
『あっはい、120円です』
レジ近くにあった駄菓子を摘んでレジに乗せる。ああこれ、小さい頃よく食べてたやつだ。この人も好きなのか、漫画にお菓子にと見かけによらず趣味が合いそうな。
『シールでいいですか?』
「うん、」
『120円ちょうどですね、ありがとうございました』
「これ、あげます」
『へ…?』
あげると言って、私の掌の上に乗せるお兄さん。何でだ、この人に何かしたっけ。それともこれが東京流なのか……?
「元気そうでよかった、またね。花子ちゃん」
『え………、玲於くん…?』
「ふふっ、どうだろ?秘密」
そう言って笑うお兄さんは、昔よく見た笑顔と変わりないイタズラっぽい笑顔だった。
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