年始の飾りも予定分が捌け、漸く一息ついた。年内の営業も今日で終了だ、先に仕事を終えた杏とみどりへの挨拶も終わったため、店内には名前一人だった。
時計に目をやれば時刻は午後6時を指している。クリスマス時期から徐々に生花の取り扱いを減らして行ったおかげで休み中に花の世話をしにくる事もなさそうだ。久々の長期休暇は何をしようか。大きく伸びをした頃合いで、カランとドアベルが鳴った。
「すみません、本日の営業は終了でして――って、理鶯さん?」
「名前」
こちらを見とめた恋人はふわりと笑みを浮かべながらハグをして来た。ちゅ、ちゅと顔中にキスを落とされる。触れる唇の冷たさに、森の中から自分に会うために足繁く通ってくれる恋人への愛おしさが湧水の様に胸を満たしていった。
「ふふ、満足でしょうか軍人さん」
「いいや、まだだ」
口づけが一周したところで尋ねると、今度は唇を奪われた。最初の頃よりかは温まったそこは幾度も角度を変えては重なり、馴染み。呼吸が苦しくなった頃合いで名残惜しげに解放された。
「っふ、はぁ……熱烈ですね」
「会いたかった」
「二日前泊まっていったばかりじゃないですか」
「名前。二日も¢Oだ」
「むむ、さびしんぼさんだ」
至極真面目に答えられ、思わず笑みが溢れてしまう。たった二日会えなかっただけ、頻度だっていつも通りだ。それでもこの恋人はいつだって愛おしいと全身で伝えてくれる。
「あぁ、今更気づいたのか。名前限定だ」
「ふふ、ふ、なら責任取らなきゃいけませんね」
「勿論。明日からは休暇だろう、ずっと独り占めさせてもらおう」
額を寄せ合いくすくすと笑いあう。朝焼け色の濡れた前髪から、雪の残滓が伝い落ちた。
さて、久々の長期休暇は何をしようか。ベースでキャンプをしながら年を越したっていいし、どこかへ旅行へ行ってもいい。勿論、家で過ごすのだって。
きっとなんだって楽しいに決まってる――愛しい貴方となら。