今日は疲れたなとため息をついて白雪は脱いだ制服を膝の上に置く。
ブレザーはハンガーにかけないと皺になる、シャツは早めに洗濯機に入れないとお母さん怒るし…そう考える頭とは逆に体は後ろのベッドへと向かう
重力に任せて沈み込めば予想以上に疲弊していたのがわかる。
赤司と黒子
初対面の人間と一度に二人も出会い、昔話をすることはだいぶ勇気が必要だった。
一人に慣れた帰り道を三人で歩くのは、それはもう違和感でしかなかった
何をするでもなく、虚空を見つめる眼はやはりきらきらきらきら、散りばめた光が自ら反射しているように輝く。
明日は土曜だし、予定もないし。
好きなだけだらけて寝よ
うつらうつら瞼が閉じかかってくる。
宇宙を閉じ込めた瞳は、長い睫毛に覆われて何も映さなくなった。
部屋の中の空気が蠢いて、狐の影を作り出したことに気づけずに
休日はのんびり過ごせた。
母に少しわがままを言って好物を作らせてみたり、気まぐれにコンビニへ出かけてファッション誌を買って読んでみたり。
その雑誌の中に黄瀬涼太が出ていたことを彼女は知らない
有坂白雪という人間は内向的である。
しかし友人が少ないというわけでもない。
人見知りはするが話しかけられれば出来るだけにこやかに対応するためクラスメイトには良く思われているし、クラスの離れてしまった一年時に交流のあった友人とも今だに仲が良い
ただ、自分に興味を持たれることに臆病だ。
褒められることも好かれることも嫌いではないのだが、ほんの一部だけを判断されて好意を持たれた場合、本来の自分を見せた時に失望されるのが怖いのだ
だから白雪は他人に興味を示さない
そこに在るものだけを受け入れる。
ないものを得ようとねだることはしない。
クラスメイトが彼女に赤司や黄瀬、その他バスケ部の話などをしたかもしれないけれど、彼女にとって直接関わりがないため忘れた
黄瀬を見つければ大抵の少女はその端整な表情にどきりとし、ひゃあと声をあげて喜ぶ。
だがその他大勢と同じ扱いをする白雪が彼と出会いその体温に触れるのは、だれの思惑か、予想以上に早く訪れる
パソコンでみずちを調べる。
彼女の母はチラリ、白雪と画面を見たが何も言わず。
視線が此方を見たことを知っていた白雪は安堵の息をついた
蛟
ーー水龍や河の主と書いてあるわりに体を表す名は虫偏なんだ…
蛇っていう説もあるからなのかな
ふむふむと顎に手をあて真剣にインターネットのページを読み込む白雪。
普通より白い肌は日中の陽に照らされて、発光しているようだ
何よりも、瞳の紺青が、強く強く光を発している
これはこれは、美味そうに育った
満足げな声は一体、だれの言葉だったか
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