「あ。忘れてた」


黄瀬くんに会った日から二週間。
あれからは何事もなく過ぎ、赤司くんにも黒子くんにも会わずにいた。
広いし生徒も多いから会おうと思わなければ会わない

二週間前、初めて黄瀬くんに会った時のあの靄の猫の正体を教えてもらうのすっかり忘れてた。
それを二週間越しに気付くってどんだけボケてるんだろう自分…

一緒に登校したときに交換したアドレスを初めて呼び出し、彼にメールを打つ。
無難な文章とこの間の黒猫の件を詳しく聞きたい旨を書けばものの数分で帰ってきたメール


ー今日の昼休み空き教室に来れる?
件て書いてあるから緑間っちのことかと思ったっス!


件?緑間?
黒猫の件と書いた文章の何が引っかかったのかわかんない。
緑間っちとか言われても知らないし
本当この人マイペースだな

大丈夫だよ
了承すれば今度は秒速で返事がきた。こわい


ーじゃあ昼休みに第三自習室で!


お昼休みに入ってすぐ友人に今日はお昼を別にすると謝る。
お弁当を持って教室を出て途中でパックの飲み物も購入する。
いちごオレかココアか…
逡巡した後にいちごオレにした
明日は絶対ココアにする!


指定された教室に行ってみればまだ黄瀬くんは来ていない。
まあ私が早く来すぎたし、座って待っていよう
窓際を陣取ってしばしぼうっとしていれば、引き戸が開く音と賑やかな声が同時にした


「白雪ちゃん!遅くなってごめんね!」
「黄瀬くん」


振り向けば黄色と、なぜか長身の緑髪の男の子までいた。
知らない人連れてきた…
彼のマイペースさに呆れるのも本日二度目である


「白雪ちゃんのメール見たら緑間っち思い出して、緑間っちの方がアノコトは詳しいし説明上手だから連れてきたっス!」


ぽんぽん飛び出てくる言葉に理解が追いつかないが、確かに黄瀬くんの説明に期待するより緑髪の彼にしてもらった方が良さそうな雰囲気である


「突然すまないな」
「あっ、いいえ。あの…」
「有坂のことは黄瀬と接触したときに赤司から聞いている」
「赤司くんから?」
「ああ。コイツが朝練前に有坂と会った日に、赤司がついでだからと妖怪の奴らに話しておいたのだよ」
「だから緑間っちも俺も白雪ちゃんの力を知ってるっス」


事の展開にぽかんと空いた口を手で閉じさせる。
何いまの可愛いっス!って騒いでる子はもう放っておこう


「緑間真太郎。三年七組、こいつらと同じくバスケ部なのだよ」
「……緑間くんも妖怪?」
「俺は件を先祖に持っている」
「くだん?」
「簡単に言えば、緑間っちは未来を読める妖怪なんスよー。まぁそれにも対象者や期間とか制限あるみたいっスけど」


黄瀬くんが横目で緑間くんを見ると彼はメガネのブリッジを掛け直した。
私の近くの机にお弁当を置き、包帯が巻いてある指先で包みをほどいていく。
怪我でもしてるのかな


「赤司が三週間前のあの日に出会うことは知っていた…有坂とまでは特定できなかったが。二週間前のことも、登校中に黄瀬が黒猫の呪に出会い遅れてくることもわかっていたのだが…どれも有坂が見えなかった」
「?」


私が見えないことがそんなに問題なのだろうか。
各自お昼ご飯を食べ出したので私もお弁当を開ける


「どんな風に緑間くんが未来を読むかはわかんないけど、黄瀬くんや赤司くんの未来を読んだんだよね?なら私が見えないのはそれほど不自然にも思えないけど…」
「件の妖怪自体は知っているか?」


わからない、と首を振る


「件は半人半牛の外見を持ち、戦争や自然災害など大きな予言をしたらすぐ死んでいたのだよ。俺は死にはしないが、予言は夢の中で伝えられる。そこで毎回予言した件が朽ちていく」
「え、でもそのくだん自体が緑間くんなんじゃないの?」
「件が人間に住み着いた力と考えるのが俺の場合正しいだろうな」


ふむ。
妖怪が先祖といってもいろんな形があるんだな。
卵焼きを食べながら口を挟まない黄瀬くんを見ると難しい話にはノータッチなのか、はむはむパンを食べていた






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