女郎蜘蛛《じょろうぐも》
美しい女の姿をした蜘蛛。
しかし化けることができるというだけで女の妖怪というわけではない
男を惑わし、夜になると巨大な蜘蛛となりその人間を喰らう妖怪。
また縁起を担ぐものでもある
人を騙し喰うほどの知識と妖力のためかなり強いと言えるが、狐とは相性が悪い
件《くだん》
予言をする妖怪で姿は半人半牛。
災害や戦争などの大きな出来事を人々に伝えてその直後に死ぬ
死ぬタイミングは予言直後とも事の成り行きを見届け次第とも云われる
予言が外れることはあり得ない
有坂白雪については、二週間前の朝練後に赤司から伝えられた。
声を媒体とした不思議な力と輝かしい瞳の持ち主。
また、そこそこ力のある妖狐に狙われている可能性もあるから各人注意してみておくようにともー
黒子と赤司、黄瀬は会ったことがあるからいい。
俺と青峰や紫原、桃井は有坂の外見もわからなければ声も知らない。
妖怪でないのならニオイで探ることも出来ない。
黒子にこっそり連れてってもらうか?と三人で話し出したところで、
「私、知ってるよ?白雪ちゃん」
「それを最初に言えよ蛇女!!」
青峰に賛同してしまったのは致し方ない
「人間に住み着く…じゃあ赤司くんや黄瀬くんは違うの?」
「緑間っちの妖怪の存在が特殊なんス。普通は俺らみたいに存在そのものが妖怪になるけど、件は予言後に死んでまた生まれなきゃいけない」
「俺たちのように妖怪の血を受け継ぐ人間が派生したルーツはわからないが、憶測としては大方絶滅を恐れた妖怪が人間に憑依したのだろう。そう考えたら俺の件も頷ける」
延命のために憑いた命が予言の度に死んでいては意味がない。
だから夢という他者が不可侵の領域に住み着き力を発揮する
頭の回転は悪くないようで有坂は納得した顔をしている
「そして俺の夢に件が出て来て赤司があの日にナニかに出会い、それによって人生が大きく変わるのを視た。俺の力は、俺に関わる人間の大きな変化や災害などの予言は夢によって行われ、小さいことなどは映像として起きているときに視る」
有坂はこの世界で他のだれも持ち得ない輝きの瞳で俺を見上げる。
禍々しいモノもニオイも感じない
だが確実に力はあるのだ
「それに有坂が映らなかったということは
何者かの力が関与しているということ」
小さく息をのむ音がして彼女の細いのどが動く
「…緑間くんのことはわかりました。それで、黄瀬くんと会った時の黒猫のことだけど」
「アレのことなら黄瀬からも聞いている」
干渉するその相手が誰なのか
心当たりはあるようだが話す気はないのだろう、下手な逸らし方だ
まあ赤司が詳しく知っているようだから彼女に何かあっても虱潰しに妖怪をあたることもない
「アレは呪と呼ばれるモノだ」
「しゅ?」
「呪いって書いて、しゅって読むんスよ」
黄瀬が指で空中を呪となぞってみせる
「じゃあアレの存在自体が呪だったの?」
「そうだ。しかし消えかかっていたのだろう?それは呪が役目を完了したからだ」
「役目を、完了…」
「どの程度かはわかんないっスけど、対象者に不幸をもたらし終わって消えかかってたんス。だからそこに関われば」
「新しい呪の対象者となるから黄瀬は有坂をとめた、というわけだ」
そうなんだ…と彼女の感嘆の息をつく音だけが教室にこだました
「なんだか陰陽師?みたいなのもあるんだね」
「妖怪を祓うのも陰陽師だからな。その能力を対妖怪ではなく対人に使用する者もいたんだろうな」
「じゃあ黄瀬くんは助けてくれたんだね。ありがとう」
ー緑間くんも、時間割いてくれてありがとう
美しい紺青の輝きが細められて彩られるように微笑む少女
この紺青が濁らぬように、何か最善を
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