具体的に力が私生活にどんな影響を及ぼしているかというと、そりゃもうたくさんある。

まずは、友達だ



「おはよー」
『コンバンワ、こんばんは。こんばんは?』
「おはよう」
『ねえ今日どっか遊びに行こうよ』



クラスメイトが私を見つけてあいさつをする。そして雑談を開始すると、友人たちの声でまったく別の脈絡のないことを話し始める。
二重音声のような感じだ。
最初は友人が何かを言ったのかと思ったけど、あまりにも無関係なことだし、可笑しなあいさつだったりするため、自分の力のせいで聞いてしまっているとわかった。

害はないけれど、多少なりとも疲れる。からやめてほしいんだけど。
この別音声は時と場所を選ばず、まったくのランダムのため、驚くこともしばしば。
そのためたくさんの人が集まる時や、二クラス合同で行われる体育はけっこうきつい。
休んでしまうこともあるのは本当にいただけない。

あと一番力の影響が強いのは、夢。
私が本当の意味でこの力に覚醒したのも夢がきっかけだった。
他の人はわからないが、私のきっかけが夢だったからか、とにかく夢見の影響が強い。

予知夢だったり、意味深な夢だったり、過去にいっていたり。
最近では要領を得たため、眠るときに自由に夢を選べるようになった。
ただし霊的な力のある夢に限るから、自由にとは言い難いのかもしれないが。
眠りに落ちる瞬間、目を閉じて気にかかる夢を思い出して、その場所へ意識を落とし込む。するとその夢の中で一晩過ごせるから、嫌に引っかかる夢を見たときは便利だ。
ただ起きているような感覚がふわふわと続くから体は休まらないのが難点だ。
私は勝手に夢入と呼んでいる。


細々としたことから、夢にまで影響がある。
人の悪意との鬼ごっこやらちょこまか動き回る狐や黒猫のような靄が見えたりくらいのみならいいんだけどな。



「…え?」


またいつものように黒い靄がウロウロしており、それを目で追いかけていた、ら。
靄は赤髪の少年を追いかけていたのだが少年は、それを、手で払い除けた。


払い除けた?


さりげなく後ろ手で靄のある辺りをさっさっと掃くように手を動かしたら靄は消えた。
んん?
え、そんなこと出来るの?いやむしろ祓ったということは、彼にはアレ等の存在がわかっているということだ。
赤髪の彼は、私と同類なのだろうか。

そんな疑問も虚しく、彼はどんどん遠のいていく。後ろ姿を見つめていれば体育館へと入っていった。
あの体育館は、バスケ部だ


「よし」


少しだけ覗いちゃおう。
消えてしまった赤髪を追いかけて小走りで体育館に向かう。
こっそり中を伺えば朝練中のバスケ部が。
大変だなぁ…
赤髪の彼は見つからない。
制服のままだったし、バスケ部じゃないのかな?


同じ三年生とも限らないけど、あんな鮮やかな髪色をしているんだ、普通に生活していてもまた会えるだろう。
潔く諦めて自分の教室を目指す。


「今日は狙われないといいんだけど」


願望を口に出すことは忘れない






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