灰崎祥吾は暇を持て余していた。
元々真面目に活動していたわけでもない部活は、辞めさせられるという形こそ腹立つが、だからと言って辞めたことに対しての悲しさはなかった

ふらふら、うろうろ
隣に永遠にくっつくのではなく、懐に飛び込んで好きな時に出ていく猫

人のモノをとっては捨てることを繰り返す自分を表すならばこれだろう
彼自身まで犬に成り下がるつもりは毛頭ない


ー犬神憑きという家系に生まれたのは不幸ではない


悲観して嘆くのは簡単だが、そんなものはつまらない。
灰崎の系譜を辿ると代々弱まってはいるが犬神の呪いが受け継がれている

力の強弱は持ち主の性格によるらしい。
彼は強欲であり強者であり、好戦的
犬神の何もかもを呪う力が増幅されるのは当たり前といえばそうだった


黄瀬や赤司がおもしろくなかったのは事実だし、時間を潰してくれる人間も近くにいなかった

だから瞳の脅威をやわらげて微笑みかけている赤司が。
つまらないと辟易した顔じゃなくて心から楽しそうな黄瀬が。
世も知らずに幸せだというように笑う少女が。


なんだよ、壊したくさせるなよ


何かを奪うのは快感だ
でも自分には何も残らない





犬神《いぬがみ》
大昔、妖怪に狩られその首を晒し挙げられたことから深い怨みを抱いている。
妖怪たちが弱り人間の中へ入り生き延びているのを知り、いつまでも復讐を課すために自らも人間に憑いた

妖怪憑きとは根本的に異なり、犬神憑きは一族全体が呪われているようなもの。
妖怪憑きのように血に強い力も混じらず、嗅覚が鋭いのみ
靄程度のモノなら服従させることが出来るが妖怪に比べたら地位は低い。
このことから犬神憑きは妖怪憑きとは相容れないことが多い
腰骨の辺りに黒い紋様が出ると、それは犬神憑きの印

人間もなれず、妖怪にもなれないで彷徨うしかない怨念





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