呆気なく関係性は消え去った。
長い期間を過ごしたわけじゃないけれど人見知りで、なのに誰よりも優しくてあたたかい彼女の隣を笑って歩くのは心地よかったのに
黒子っちや赤司っちから白雪ちゃんの話を聞いて、誰も何も責められなかった。
責められなかったけど、もしそこにいたのが自分だったのならと、青峰っちも桃っちも…そして誰よりも俺が。
『自分がいれば』、強くそう思った
でも実際に出来ることなんてきっと何も有りはしなかった
ショーゴくんのときだってそう。
もっと早く家を出ていれば
もっとあの男の物欲しさに注意していれば
もっと警戒していれば
もっと、もっと、もっと…
風が吹けば崩れるような、そんなもしもの言葉ばかり
君はいつだって誰かのためにしか動いてなかった
最初はバカだろって思ったんだよ、だってそうじゃん。
俺みたいなの苦手なら避けたっていいのに俺自身を必死に見ようとして、女郎蜘蛛なんてキモチワリー化け物を理解しようとしてくれて、美人な黄瀬くんなら納得なんて言っちゃってさ
なんだよ、女郎蜘蛛がピッタリって嫌味っスか
ー喜んだ俺が一番浅はかなのは、気づいている
光を散りばめた紺青に再び俺を映して笑って欲しいけど、ひたすらに見守ることしかもう出来なくなってしまった
一から黄瀬涼太と有坂白雪の関係性を築き上げる勇気は、俺にはない
卒業式をめでたく迎えた肌寒い春の日。
せっかくみんなと一緒にいようと思っていたのに女子に追いかけ回されてボロボロだ
やっと逃げ込んだ二階の教材室は掃除も満足にされていなくて、埃が窓からの日差しに輝いている。
窓枠に腰かけて硝子戸を開ければ、冷たい風がひゅるり入る
下の校庭に彼女を見つけて、心臓が痛くなった
友人たちに添えられた耳元の色とりどりの花
髪が風に遊ばれぬよう押さえて彼女は不意にこちらを見上げる。
ー俺を見つけて照れ笑いを浮かべた
あまりに美しい光景に、呼吸もうまく笑い返すことも忘れて、手元のデジカメのシャッターを押した
彼女は少しびっくりしてる
あどけない表情が可愛いな
何処からか彼女を呼ぶ声がして、俺に一度手を振り『卒業おめでとう』と囁いて走ってゆく。
無意識なのだろう
だが力を使って落とされた声は、俺の耳にはっきりと届いた。
ああ、甘い蜜のような声は俺を残してく
「もう君のいる春は、…過ごせないんスね」
夏が来るまで。
それまでは後悔させてよ
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