卒業式終了後、帰らず第四体育館ギャラリーに集合!
桃井からバスケ部の妖怪六人に卒業式前日に送られてきたメール。
こんな風に呼び出されるなんて白雪の事に関すること以外ではなかったのだが、はて
それぞれ疑問に思うが素直に集まる五人。
やはり黒子は現れず、桃井を含めた六人は顔を見合わせてほんの少しだけ気まずい空気になる
「こんなとこに呼び出してなんだよ、さつき」
「今日はみんなにして欲しいことがあって呼んだの」
「して欲しいこと?めずらしいっスね、桃っちからのお願いなんて」
黄瀬がこてん、首を傾げさせる
この体育館は運動部用に作られたもので行事にも使用されない。
中も周囲も無人だ。
窓からほんのりあたたかい日差しが入る
「…今日で、みんなで白雪ちゃんと会えるのは最後でしょ?だから最後に卒業おめでとうって伝えたくて」
「はあ?直接言えばいいだろそんなもん」
「だからお前は馬鹿なのだよ。記憶を喰われた有坂が突然俺たちに卒業おめでとうなんて言われたって迷惑なだけなのだよ」
「そーいうこと!本当バカね青峰くん」
「うるせーよ!」
赤司はずっと押し黙ったまま。
視線は儚く、対岸にある窓の青空を眺めている。
一番、白雪に対して思うところがありその思いが強いのだろう。
理解しているため、誰も彼の態度に不満を漏らすことはしない
「前に白雪ちゃんが一度でいいから桜吹雪の卒業式を体験してみたいと言っていたという情報を得ました」
「お前はなぜそんなところで持ち前の武器を発揮しているのだよ」
「盗み聞きでもしたんスか…」
「そこで!私達の妖力で火の玉作って花吹雪みたいに散らして、白雪ちゃんの卒業を祝おうという企画なのよ!」
「おおっ」
黄瀬の目が輝き、握りこぶしを作り桃井に賛同する
ー彼女が、望むもの
赤司の表情にも、明るみが灯った
「いいよ、やろうか」
彼が頷けば皆動く
「そろそろだと思うんだけど。来てくれるかなぁ」
「さっき見かけたけど友達と写真撮ったりしてたっス。白雪ちゃん、優しいから丁寧に対応してるし」
「きーちゃんみたいにヒトデナシじゃないんです〜」
「ヒトデナシってなんスか!」
「だってそーじゃん。黄瀬ちんは女の子からの呼び出しに行ってすらいないんでしょ〜?」
「ぐっ……!いやいや、リアルに行ける数じゃないんだって!」
「自慢ウゼーよ」
桃井と黄瀬、紫原に青峰が騒いでいる。
輪には加わらず、赤と黄の瞳を閉ざし窓際にもたれかかる一人とずっと扉を見つめている緑の瞳
「それに俺は告白より白雪ちゃんの喜ぶ顔が見たいんス!」
「来た」
スッと赤司のまぶたが開き告げた途端、遠慮がちに体育館の扉が鈍い音をたて動く。
見つからないように入り口からは死角となる場所へ全員で隠れ様子見する
ひょっこり中を覗き込むのは流れる髪と、一際輝きを放つ対の紺青
「……あれ?」
だれもいないのかな
ぽつんと無音にのまれていく声は、あれほど待ち望んだ少女の甘美な声音
赤司の唇が了承を出したのを確認して、全員が柔らかな想いを込め、己の妖力を鮮やかな火の玉にして指先から彼女へと落とす
温度のないソレは、触っても問題ない上に普通の人間には見えない
だからこの花吹雪は彼女だけのもの
「わぁ……!」
白雪は感嘆の声を上げ舞降りる火の玉に触れようと手を宙へ伸ばす
うまく捕まらないのが少々もどかしく、けれどもこの美しい情景にやがてくすくすと囀り出した
やっと触れたひとつの火の玉は温度がないはずなのにあたたかく感じた
至極嬉しそうな表情をして、大切に火の玉を包み込む
「ありがとう」
偶然か否か
白雪は死角にいる六人へはっきり笑う
刹那、桃井は決して声は出さぬように口を押さえ、ぼろぼろ大きな雫を落とした。
そしてどうしてなの、と小さくつぶやく
彼等は様々な想いを込めて、白雪を見つめてる
消せなかった目尻の紅がこれまた美しいだなんて、皮肉だねと、最後に彼は笑った
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