彼女の気配には、既視感が強く存在していた。


生徒会室での用を済ませてから部活に向かう途中、普段よりも少し強い気配を感じた。
これは…悪意の塊を弱小の妖が喰らって成長したのか。
放っておいてもいいが、知らぬふりをして後々にやつが目をつけるのは力のある僕たちだ。

ならば早々に潰してしまおうと感覚を研ぎ澄ます。
三年の教室前か。


「…………?」


妖と、あとひとつ。
不思議な力がある。
妖のように濁ってはおらず、かといって僕たちのように只々強いだけではない、真白のような金色のような気配

これだけ美味そうな力だ、十中八九妖に襲われているのだろう。
人間か妖怪かはわからないが、行けばわかる。
妖怪ならば使役にすればいい




僕の手をとった小さな女の子の手。
気配の正体は人間だった。
尻もちを付いて動揺している彼女の瞳は、紺青に輝いていた

細かい光を散りばめたように、紺青の瞳はきらめいている。
これは、何かしらの力が発動している影響か?
座り込んで呆然としている彼女をまず助け起こす。


「あ、あの…」


繋いだ手はそのままに、戸惑いを表情へありありと浮かべる彼女と向かい合う。
白い肌に、派手なわけではないがきれいに整った顔立ちだ。


「怖かっただろう、どこにも怪我はないかな?」
「あ…えと、はい。ありがとうございます…」
「僕は三年の赤司征十郎。君は?」


三年というと驚きに目を瞬かせる。
ぱっちりした瞳をまん丸にして、やや首を傾けさせる。


「私も三年…有坂白雪です」
「同じ学年だね」
「なんか、アレ見ても動じないで助けてくれたからひどく大人びて見えました」
「大人びてるって、僕たちが最高学年だろ?そして君のその目は……無意識かい?」
「?」


僕が問いかければ何もわからない、と言うように先程より首を傾げ、左手を左目にあてがう。
まだきらきら輝く瞳で僕を見上げる。


「何か変なところある?」


無自覚か。
彼女のそれはきっと力を持った時に得たものだろう。


「君はさっき、アレにナニをしたの?」


彼女が力を有していてあの蛇に使っていたことは確実だろう。
問えば、固まる彼女。
繋いだままの白い手がぴくり、痙攣して動かなくなる。
ああ、やはり初めて会った気がしない。
僕はこの子の優しさに触れたことがある。


とって食いやしないよ、ただ僕は君が知りたいだけなんだ





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