赤司征十郎と名乗った彼は確信めいた視線を持って私に問いかける。
私と彼の間には、何か絶対的な力の階層があるようで、逆らえない雰囲気だ。

でも言ってもいいのだろうか?
これは誰にも言ったことのない秘密であって、これから先もしまっておくべきモノ。
ああ、どうしたら、


「警戒しなくていいよ。話すことを躊躇うなら、僕が証拠だ」


私の様子を見兼ねてか、赤司くんは唐突にそう言うと微笑んだ
ためらうなら、僕が証拠だ?
なんだと言うのだろうか


「ッ!」


少し空気が揺らいだと思ったら、赤司くんの背後にふさふさとした尻尾が生えた。それも、四本。


「え…?あ、え、え…?」
「僕は妖怪だ。さあ、君はナニかな」


ふぁさ、ゆるく揺れる尻尾が風を送る。
なにかなと言われましても…
正直そんな立派なモノでもなければ自分の力に対しての絶対な確信もない。
でも、ここで赤司くんに告げれば、何かがわかるかもしれない


「わ、私は…少し変な力があるの」
「変な力?」
「うん。特に自分が妖怪とか赤司くんみたいな尻尾はないけど、さっきの蛇みたいなモノが見えるし声もきこえる。でも、一番は」


『手を離して欲しい』
「!?」


力を込めて声を出すと彼と繋がれていた手は彼の意思に関係なく、私の声によって離される。
勝手に動いた体にひどく驚く赤司くん。
そりゃそうだよねー


『赤司くんのクラスと部活を教えて』
「…………三年四組、バスケ部」


少々抵抗したのか間が空いたが、無事この声の効力が発揮される。
ほう、と息をついて、力を消す。


「これが、私の力なの」
「……すごいな…有坂さんのような種類の力は初めてだ。それも、君はまごうごとなき人間だろう?」
「うん。力を持った時不思議に思って家系を調べてみたけど、妖怪とか霊的な力の特筆はなかったよ」
「ならば後天的なものか…」


口元に手をあてて考え込む赤司くん。
その間もゆらゆらと尻尾は揺れていて、柔らかい黄金色が私を誘惑する

なんだか考え込んでるし、いいかな…
彼の真横に行きふらりと顔の前に来た尻尾に触れてみた。
赤司くんが意識を持って動かしているのかはわからないが、頬を撫でるように動いたので堪らず頬ずりする。


「僕が、君を守るよ」


くすり
笑う声がして、甘くその言葉が響いた。






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