力《ちから》
物理的で誰でも持ち得るものではなく、潜在的で目には映らないモノを表す


妖怪《ようかい》
姿は人間だが妖怪を大元の先祖に持つ者が現在は主流。
一族の全員が妖怪の力を持つわけではなく選ばれた者のみに憑き、一度に二人の妖怪が一族に現れることはない。
故に隔世で出ることが多く、妖怪の力も強い。
階級があり、強い力を持った者に弱い者は従う




「そして僕は天狐を先祖に持つ者として、恐らく存在する妖怪の上に立つことが出来る」
「じゃあ、私が妖だと思っていたあの靄は、」
「ああそれは」
「待ってッ!私の考えた事も合ってるか聞いてくれる?」


赤司くんに連れられて空き教室に入り、今まで私が勝手にそうだろうと思い解決してきたことの答え合わせをする

ふむふむ、大抵の読みは当たっていた。赤司くんが妖怪を先祖に持つとは予想外すぎて目ん玉をひん剥いてしまったのはしょうがない
赤司くんの説明を必死に食い止めれば笑われる。


「どうぞ」
「うぅ…笑わないでよ」
「ごめんごめん、あまりに全力で止めるから、つい」
「……あの靄は、人の悪意とか妬みとかそういう感情の塊だと思ってた。祓った次の日にもまた発生してるってことは人がいてそこから生まれるモノってこと…だよね?」


赤司くんは私の問いかけにこくりと頷く。


「笑ったり喜んだり、いい感情はあんな黒い靄になって人に付いて回わないだろうと思ってた。そしたら悪口言ってる女の子が立ち去った場所にぽつんとすごく小さな靄がいたことがあったんだ」
「…きっとその生徒は言葉以上に強い気持ちで、相手に黒い感情を持っていたんだろうね」



色違いの瞳をかなしげに落としぽつりとつぶやく言葉も、私が思っていた以上に悲壮げだった。

本能的に開きかけた口が何を言おうとしたのかはわからない。
けれどきっと何を言っても偽善になる気がして噤むかわりに、彼の手を握る。

爪は動物のように細長い形をしているけど、私より一回り大きくて、節くれだった手。
赤司くんが子供みたいに笑ってくれたから、これは正解だったんだと私も笑った






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