下校を報せるチャイムが大きく反響してゆく。
放課後すぐにあの蛇と出会ったから、そんなに赤司くんと話し込んでしまったのか。


「ていうか赤司くん、部活終わっちゃったよね!?ごめん!」
「まあ…仕方ないだろ。僕も有坂さんが興味深かったからね、構わないよ」


微笑んで言ってくれたが、本当だろうか。
顧問の先生に怒られたりしないのかな


「予め僕が生徒会に用事あることは報せているから。カバンも更衣室に置いてあるし平気だよ」
「ならよかった…」


ホッと胸を撫で下ろすも、赤司くん生徒会なんだね。すごくピッタリだ。
ずっと繋いだままだった手を引っ張り上げられ、椅子から優しく立ち上がらせられる。

さあ帰ろう
甘い声に促され彼の双眼に捉われたままの私を連れ立って教室を出る。
やはりと言うべきか、人っ子一人いない

いつもなら多少なりとも不気味だな、と思うはずなのに、前を揺れる赤い髪のおかげで何の不安もない。

そういえば尻尾、ふわふわだった。赤司くんの動きに合わせてふわんふわん私を誘惑する髪も同じく柔らかいんだろうな

繋がれていない左手を伸ばしてちょん、と遊ぶ髪の毛に触れてみた。
毛先にしか触れなかったからバレてないと思いきや、ばっちりわかっていたらしい。
彼の肩が少し震えていた。


「尻尾といい君は揺れるものが好きなのか?」
「なんかふわふわしてて気持ち良さそうだから、つい」
「……君は相変わらずなんだね」
「え?」


「赤司君」


彼は相変わらずだと言った。
それは、昔にも会ったことがあるということ?
口を継いで出た言葉に彼自身も目を瞠っていて、疑問から出た声は第三者によって遮られる


「こんなところに居たんですか」
「………テツヤ」


てつや、と呼ばれた男の子は明るい水色の髪と目が美しい子だった。
部活終わりにすぐ赤司くんを探しに来たのか練習着のままだ。

てつやくんは赤司くんと手を繋いでる私に驚いたようで、アーモンド型の瞳をより大きくした


「彼女は…?」
「有坂白雪さんだ。大丈夫、彼女も仲間だよ」
「彼女も?」


置いてけぼりになったまま会話に耳を傾ける。
てつやくんは特に私を警戒してるとかではなかったけれど、赤司くんが仲間だと言ってから優しい眼差しになった気がする


「彼は黒子テツヤ。僕と同じバスケ部で、妖怪を先祖に持つ仲間だ」


安心して、というようにこちらへ微笑んだ赤司くんに背中を押され、黒子くんの真ん前に立たされる。
私が人見知りなのをすっかり察したのか、たった数時間で慣れた扱いだ


「はじめまして…有坂、白雪です」
「初めまして、黒子テツヤです」
「あの」
「はい?」
「黒子くんは何の妖怪なの?」
「え…」


え。聞いちゃいけないことだったの?
また驚く黒子くんに、私は初っ端から地雷を踏んでしまったのかとわたわた慌てる。
どうしよ、嫌なことだったのかな?
聞かれたくないことだった?


「ごッ、ごめん!聞いちゃいけないこと、」
「テツヤ。有坂さんが誤解している」


赤司くんが助け舟を出してくれたおかげで黒子くんはハッと意識を戻した。
すみません、予想外だったものでつい…となぜか私に丁寧に謝る黒子くんを止める。
私が地雷踏んだ流れだったのに何謝ってもらってんの!


「僕は蛟という妖怪です」
「みずち?あんまり聞いたことないな…よし、家に帰ったら調べておくね!」


みずちってなんだろう、水辺にいる妖怪とかかな?
唖然とした黒子くんを置いてけぼりにして私は考えに夢中になる。
何を隠そう実は私は大の妖怪好きなのである。

妖怪のみではなく、妖精や人外ものや不思議なものが大好きだ。
中国の神獣も一時期ハマって調べたりしてたぐらいには好きだ


「私妖怪って大好きなんだよね!」


黒子くんと赤司くんの手をとってはしゃいだ顔をすると、二人は瓜二つな表情を作った。
え、なんなの





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