青峰くんからのアドバイスを頼りに、さつきちゃんに黄瀬くんと黒子くんの電話番号を教えてもらう。
どうやら赤司くんは京都、紫原くんは秋田にいるとのこと。
切望するほどに会いたい人は、軽く越えられる距離にはいない


ひとりで電話する勇気もないため青峰くんとさつきちゃんを誘い、月曜にお昼を共にしながら電話を見守ってもらうことにした。
うう、電話はほとんどしないから緊張する…しかも相手が黄瀬くんならなおさらだ

彼がモデルをやっているということはさつきちゃんに教えてもらった。
青峰くんに言わせたら、アレはただのバカな化け蜘蛛だ、とのことらしいが。


「い、今かけちゃって平気だと思う?」
「きーちゃんもお昼休みだし平気だよ〜」


先輩と食べてるかひとりで隠れながら食べてると思うからだなんてさつきちゃんは言う。
なにそれ、余計に邪魔しない方がいいんじゃないのかな…


「いーからさっさとかけちまえって」
「、あっ」


携帯を取り上げ通話ボタンを軽く押してしまう青峰くん。
ああ…もう少し人見知りの葛藤を察してほしかった…
さつきちゃんが青峰くんを咎める声がするけど、携帯を持ったままの彼は意に解さず、耳から離して持った携帯と話し始めた


『…もしもし?』
「おー黄瀬」
『えッ、え?青峰っち?』


知らない番号からの着信に不審がる声で黄瀬くんが応答する。

─黄瀬くんの声、久しぶりに聞いたなぁ

低いけど軽めの声質で、爽やかな声。
目を閉じて少し堪能する


「ほらよ」


大体は説明してやったから
そう言って私の耳元に当てられる携帯からは、さっきまでは遠かった声が直に響いた


「えと、黄瀬くん?名字です」
『本当に、ほんとーに名前ちゃんなんスか…?』
「うん。久しぶり、黄瀬くん。ちゃんと思い出したよ」
『…ッ』


喉が引きつるようなか細い涙声がして、ごめん、一言謝るための三文字が降ってくる。
なんで謝るんだろう?私は、どんなことがあってもみんなと関われてこうやって思い出せて、幸せだと感じる

謝らないでと言いながら、嬉しくて柔らかい気持ちになって笑った



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