電話をした二日後に黄瀬と名前は一年ぶりに対面した。
名前は部活がない日にならという条件を提示していたが、彼が我慢できるはずもなく。
先輩へ説得に説得を重ねやっと二日後に会えることになった

なぜ説得に説得を重ねなければいけなかったのかは彼の人柄による。
体調が悪い・用事がある・モデルの仕事が入った等々、思いつく限りで休みを申請しても笠松や森山に突っ込まれしどろもどろになった挙句、彼は簡単に論破を許したからであった。
素直すぎるのも考えものである、と先輩はしんみり思った


黄瀬、桃井、青峰、名前の順に並んで歩く。
もちろん黄瀬は名前の隣へと行きたがったが青峰と桃井に妨害され、泣く泣く彼女から一番離れたところを歩かされている


「きーちゃん、場所は決めてあるの?」
「マジバでいいんじゃねえ?」


尋ねられたことに対して黄瀬が言うよりも早く青峰が投げやりに答える。
名前は基本的にこだわりもなく流される気満々だったため、ただただ話すみんなを眺めている。
わいわい話す様が少し遠くの存在に思えて、思考を遠くへ飛ばした

ー赤司くんは、どうしているだろうか
自分のことを覚えていてくれているだろうか
もしかしたら隣に誰か女の子がいるかもしれない

取り留めもないことに考えを飛ばしているとどうしようもない不安に襲われる。
妖怪とも、人間とも言い難い自分。
祖母の呪いとも言えるようなナニかが付き纏っていて、可笑しな力を持たされた声


ーその瞳は、とても美しいよ


恋しくて堪らない甘い声が甘美な言葉で脳内を支配する。
どうにも赤司は名前の甘心を擽る
もう一度自分にあの手が伸ばされるなら、彼女は迷いも疑いもせずに彼の手をとって生きるのだろう


「おい、名字?」


網膜の奥に思い浮かべていた、鮮やかな赤色とは正反対の青色が、彼女の視界を埋め尽くす。
小さく息を飲み込んで、心配から覗き込む彼にか細い声でなんでもない、と。
無理やり笑って見せた



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